12 / 33

第12話

ひと通り注文を終えた後、暫くしてコールドドリンクが運ばれる。 カラン…… ストローを人差し指でどかし、グラスを持ち上げた竜一が、クイッと煽る。 「……」 只のソフトドリンクなのに。 お店の雰囲気も手伝って、お酒を嗜む大人みたいに見えて……カッコいい。 「ん、どうした?」 じっと見ていたからか。少し照れたように声を掛けてくる。 「……ううん」 「なんだよ」 「何でもない」 視線を逸らし、窓の外へと顔を向け、熱くなってしまった頬を隠す。 これ以上竜一と目を合わせていたら、恥ずかしくてどうにかなってしまいそう。 カラカラン、 グラスを持ち上げ、抓んだストローをひと巻きした後、口に咥える。 指先から伝わる冷感。 だけど。一度火が付いてしまったら、簡単に冷めそうにない。 「……綺麗だな」 声に引っ張られて視線を戻せば、テーブルに片肘をつく竜一が、ブランデーのようにグラスをゆっくりと転がしながら窓の外を眺めていた。 「……うん」 僕が夜景を見ていたからか。それとも、緊張を解そうとしてくれたのか。 竜一から漂う落ち着いた雰囲気に飲み込まれながら、心地好さを感じていた。 「もうすぐ一年、か」 ナイフとフォークを器用に使いステーキをカットする竜一が、不意にそんな事を口走る。 「さくらと出会ってから」 「……」 もうすぐ、一年── 竜一が転校してきたのは、確か去年のゴールデンウィーク明けだった。 先生の後に続いて教室に入り、黒板の前に立って堂々と自己紹介する姿は、目を引くものがあって。 あの瞬間、僕は竜一に心を奪われてしまった。 それまでずっと、幼馴染みの夏生への想いを引き摺っていたから。 もし、竜一が僕のいるクラスに入って来なければ……きっと、今みたいに笑ってなんかいられなかったと思う。 「実は……記念にどっか、二人で出掛けられたらって考えてたからよ」 「……!」 「グループってのは気に入らねぇが、泊まりの許可が下りたのは……そのせいもあるんだよな。 ……なら、今回ばかりは、夏生に感謝するしかねぇ」 そう呟いた後、カットした肉片をオニオンソースに絡めて口に運ぶ。

ともだちにシェアしよう!