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第12話
ひと通り注文を終えた後、暫くしてコールドドリンクが運ばれる。
カラン……
ストローを人差し指でどかし、グラスを持ち上げた竜一が、クイッと煽る。
「……」
只のソフトドリンクなのに。
お店の雰囲気も手伝って、お酒を嗜む大人みたいに見えて……カッコいい。
「ん、どうした?」
じっと見ていたからか。少し照れたように声を掛けてくる。
「……ううん」
「なんだよ」
「何でもない」
視線を逸らし、窓の外へと顔を向け、熱くなってしまった頬を隠す。
これ以上竜一と目を合わせていたら、恥ずかしくてどうにかなってしまいそう。
カラカラン、
グラスを持ち上げ、抓んだストローをひと巻きした後、口に咥える。
指先から伝わる冷感。
だけど。一度火が付いてしまったら、簡単に冷めそうにない。
「……綺麗だな」
声に引っ張られて視線を戻せば、テーブルに片肘をつく竜一が、ブランデーのようにグラスをゆっくりと転がしながら窓の外を眺めていた。
「……うん」
僕が夜景を見ていたからか。それとも、緊張を解そうとしてくれたのか。
竜一から漂う落ち着いた雰囲気に飲み込まれながら、心地好さを感じていた。
「もうすぐ一年、か」
ナイフとフォークを器用に使いステーキをカットする竜一が、不意にそんな事を口走る。
「さくらと出会ってから」
「……」
もうすぐ、一年──
竜一が転校してきたのは、確か去年のゴールデンウィーク明けだった。
先生の後に続いて教室に入り、黒板の前に立って堂々と自己紹介する姿は、目を引くものがあって。
あの瞬間、僕は竜一に心を奪われてしまった。
それまでずっと、幼馴染みの夏生への想いを引き摺っていたから。
もし、竜一が僕のいるクラスに入って来なければ……きっと、今みたいに笑ってなんかいられなかったと思う。
「実は……記念にどっか、二人で出掛けられたらって考えてたからよ」
「……!」
「グループってのは気に入らねぇが、泊まりの許可が下りたのは……そのせいもあるんだよな。
……なら、今回ばかりは、夏生に感謝するしかねぇ」
そう呟いた後、カットした肉片をオニオンソースに絡めて口に運ぶ。
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