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第13話

……うん。 僕も、同じこと思ってた。 誘われた時は、お泊まりの事なんて余り考えてなくて。ただ……竜一と遠くに出掛けられて、長く一緒に居られたらいいなって。 でも、昨日の夜になって。よくよく考えたら、一緒の部屋で寝るんだって気付いたら……恥ずかしくて。 だから、あんな夢なんか── 「……」 リアルな感触が、咥内に蘇る。 それを掻き消すように、一口大に切ったステーキを口の中に押し込める。 コトン、 メインディッシュの後、目の前に置かれたデザートプレート。 白くシンプルな平皿の上には、ホイップクリームとストロベリーアイスが添えられた、チョコレートブラウニー。その周りには、三種のベリーダイスが散りばめられ、チョコペンで可愛らしい字体の英語まで書かれている。 「……え……」 「記念に、な」 少し照れたように視線を外す竜一。 いつの間に注文したんだろう。思いがけないサプライズに、心が小さく弾む。 「……嬉しい……」 知らなかった。竜一が、記念とかを気にするなんて。 脳内から幸せホルモンが分泌され、辺りが一層輝き、竜一の周りだけがキラキラと煌めく。心なしか、竜一がいつもより格好よく見える。 スプーンを取りアイスを掬う。そこにベリーダイスを飾って視線を上げると、竜一がじっと僕を見ているのに気付く。 「竜一も、食べる?」 少し照れながら、思い切ってそのスプーンを竜一の前に出す。 「………いや、要らねぇ」 ふぃ、と竜一の視線が窓の外へと向けられてしまう。 「……」 照れ隠しなのは解ってる。 でも、やっぱり少しだけ……淋しいかな。 ぶっきらぼうに吐き捨てられた声に、それまで感じていた多幸感が少しだけ萎む。 行き場を失ったアイスを口に含み、チラリと那月達の様子を伺えば、屈託のない笑顔で楽しげに夏生と会話を弾ませていた。 レストランを出て、エレベーター前に並んで立つ。 これからバーを利用する客なのだろうか。チン、とドアが開くと、大人の男女がエレベーターから下りていく。 「この後だけどよ」 去って行くカップルを尻目に、僕の肩に腕を回した竜一が耳元で囁く。 「……このまま、俺の部屋に来い」 密着する身体。耳に掛かる吐息。竜一の匂い。 その存在を感じる程に期待は高まり、想像していた出来事が次第に現実を帯びていく。 ドクン、ドクン、ドクン…… 跳ね上がる心臓。 触れられた所が、熱い。 「……うん」

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