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第15話
クンッと手を引っ張られ、竜一の懐にすっぽりと身体が収められる。
その温もりに包まれながら、竜一の速くて力強い鼓動を感じ、僕のそれと次第に共鳴していく。
トクン、トクン、トクン、トクン……
「さくら……」
呼ばれてぼんやりと視線を上げれば、僕を見下ろす竜一と目が合う。
「お前、小さくて……可愛いな」
いつもなら言わない、竜一の甘い台詞。背中に回された手に力が籠められ、少しの隙間も許さない程に引き寄せられる。それが、求められているようで……嬉しい。
目を伏せ、怖ず怖ずと竜一の背中に両手を回す。と、それに答えるかのように、僕の背面から離れた竜一の片手が僕の後頭部に触れ、優しく撫でる。
「……」
心地好さと恥ずかしさで、熱くなっていく頬。
竜一の厚い胸板に顔を埋めれば、ずっと欲しかった温もりに心が解されていく。
トクン、トクン、トクン……
ずっと……こうしていたい。
離れたくなんてない。
もし、同室だったら……このまま抱き合って、同じベッドで眠れたのに……
僕の髪を撫でる手が、止まる。
その指が離れ、直ぐに僕の横髪に差し入れ、掻き上げるようにして梳く。
耳に触れ、頬を撫で、顎のラインに沿って滑り下りた指先が、顎先で止まる。
クイッと優しく持ち上げられれば、合わせた竜一の眼が、柔く閉じられ──
トクンッ、
心臓が、甘く跳ね上がる。
蕩けた瞳を閉じ、やがて来る筈の柔らかな熱を待つ。
緊張で、震える指先。キュッと力を籠め、竜一の布地を柔く掴む。
「……ん、」
触れて直ぐ、こじ開けられる唇の門戸。
濡れそぼつ熱い舌が入り込み、僕の咥内 を弄って……深くなっていく口吻 。
くちゅ、ちゅくっ……
柔らかな粘膜が、厭らしい水音を立てながら僕の舌を捕らえ、吸い付くように絡み付く。
「………は、…っん……、」
息が上手く出来なくて。僅かに顎を引きながら隙間を作るものの、直ぐに追い掛けられ塞がれてしまう。
「……ンぅ……っ、」
簡単に引き出される、柔らかな熱情。
だけど、それだけじゃなくて……よく解らない不安が胸を過る。
顎に掛かっていた筈の指が、僕の頬を滑り上げ……耳たぶを柔く抓んだ後、顎の付け根から首筋へと撫で下ろす。
その刺激にゾクゾクと全身が粟立ち、快感が肌の上を駆け抜けていく。
甘く作り変えられていく空気。
その雰囲気に飲まれながらも、縋り付くように掴んだ布地を下へと引っ張る。
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