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第22話

ふわっ…… 床から浮き上がる踵。 竜一の肩口に誘導されながら、反対の手を背中に回され、優しくも力強く抱き締められる。 トクトクと高鳴る心臓。その鼓動に包まれているうちに、共鳴するかの如く僕の心臓も早鐘を打つ。 竜一の温もり。匂い。息遣い──五感で感じるうちに、心までとろとろに蕩けてしまいそう。 「……しても、いいか?」 耳元で響かれる、余裕のない声。 熱っぽい吐息が擽ったくて、僕の心臓を柔らかく跳ね上げさせる。 「ん……」 ……はぁ、はぁ…… スプリングの利いたベッド。そこに組み敷かれ、視界いっぱいに広がる竜一の顔。 そっと瞼を閉じ、その熱を受け入れようと顎先を上げ、唇の門戸を僅かに開く。 「──クソ、」 チッ、と軽い舌打ちが聞こえ、柔く睫毛を持ち上げる。 「アイツにも、見せたのか?」 「……え」 「その、エロ可愛い顔をよ」 僕を見下ろす、潤んだ二つの瞳。縁の辺りに赤みを帯び、嫉妬を奥に秘め、目尻が僅かにつり上がっているように見えた。 「………そんなの、わかんない」 困惑しながらも素直に答えれば、軽い溜息の後、口の片端が僅かに持ち上がる。 「もう……他の誰にも、見せんじゃねぇ」 僕の前髪を掻き上げながら、スッと寄せられる唇。再び瞼を閉じ、迎え入れようとしたのに。当てられたのは唇ではなくて、佐倉が付けた方とは反対側の──首筋。 そこを強く吸われれば……熱くて、熱くて。熱くて柔らかな痛みが、一瞬の火花の如く散っていく。 「……」 竜一のモノだって印を付けて貰えて──嬉しい筈なのに。 なんで……合わせた瞼の隙間から、涙が溢れてしまうんだろう。 心と身体が、震えてしまうんだろう。 「……りゅ、」 埋めて貰えない寂しい唇が、僅かに震えながら愛しい人の名前を紡ごうとする。と、キスマークを付けた熱い唇が、吸い付くように僕の唇を奪う。 ピクン、と跳ねる指先。 その指を絡めるようにして、もう一方の手が僕の手を握り締めると、熱い舌が咥内に滑り込む。まるで、僕の不安を掻き消すかのように。 「……ン、」 しっとりと湿り気を帯びる手のひら。 濡れそぼつ熱い舌が何度も絡められ、竜一の手を柔く握り返す。

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