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第25話
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朝食の時間になり、一階のバイキングへ向かう。と、混雑する入口から少し離れた場所に夏生と佐倉の姿が見えた。
遠くからでも解る、険悪ムード。
壁に背中を預け、腕組みをしながら項垂れる夏生に近付けば、僕に気付いた夏生が顔を上げる。
「──えっ!? どうしたの、それ……」
腫れ上がった片頬。
瘡蓋のある口角。
腫れぼったい二つの眼。
心なしか目の下にクマも出来ているようで、何だか顔色も悪い。
「……まぁ、チョット……な」
誤魔化すように口角を持ち上げた後、間隔を広く取って壁により掛かっている佐倉に視線を流す。
と。
「おっはー!」
突然背後から聞こえる、元気印の明るい声。振り返ってみれば、此方に手を振りながらやって来る笑顔の那月と、その陰に隠れるようにして近付く萌の姿が。
「って……あれぇ? なーんか顔、オカしくない?!」
「は? オカしくねーよ」
「ていうかぁ、君ぃ……ホントにナッチ??」
「──はぁ?! そこまで変形してねーっ、つーの!」
顎先に曲げた人差し指を添え、何度も何度も色んな角度から顔を覗き込む那月に、夏生が吠える。
そのせいで、また唇の端が切れたんだろう。いてて…、と夏生が親指の腹でそこを拭えば、どれどれ…と心配そうに覗き込む那月。
掛け合い漫才からイチャつきに変わる様子を微笑ましく眺めていると、視界の端に映る萌が、少し離れた場所にぽつんと立っているのに気付く。
「……」
やっぱり……関わりたく、ないよね……
昨日の出来事が思い出され、胸の奥が握り潰されるように苦しくなる。
「………あ、あのっ、」
意を決したように発せられる声。
両手を握り締め、僅かに俯いた萌が、ツカツカツカ…と足早に近付く。向かったその先は──佐倉の前。
「ごめんなさいっ!」
深々と頭を下げる。
それに驚いた佐倉が、壁から背を離す。
突然の出来事に、僕は勿論──夏生と那月も、驚きを隠せないまま萌に視線を向ける。
「……わ、私……昨日、佐倉くんに……酷いこと……」
か細く、苦しそうに震える声。
心なしか、肩から滑り落ちた髪の毛先まで震えている。
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