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不貞寝

次の日熱を出した伸之はひとり、ベッドに横になっていた。 何もする気になれない。 頭が痛い…… 心細い…… 孤独に押し潰されそうだった。 昨晩から後悔が消えない。 あんなに好きで、ふられてもしぶとく充の側についていたのに……。 なんで俺は引き下がってしまったんだろう。 カッコつけて「行ってきなよ」なんて、どの口が言ったんだ…、と後悔の思いが溢れ出す。 いつかは恋人同士になれるんじゃないかと夢見てたんじゃないのかよ。 涙が止まらなかった。 この涙と一緒に、あいつとの記憶も流れ落ちて消えてしまえばいいのに。そうすればこんなに辛くないはず。 声が聞きたい、笑顔が見たい。 何とも思っていなければ、あれからどうした? 彼とはもう会ったのか? 上手くいったか? と、軽く連絡できるのに。とてもじゃないけど今の自分にはそんな風には振る舞えなかった。 今頃あいつと会ってるのだろうか? 思いを伝えて幸せになれただろうか……? それとも傷付いてないだろうか? 大丈夫かな。 俺は同性に告白する怖さを知っている。 ただ断られて上手くいかなかっただけならいい。 相手が同性愛に嫌悪するタイプだとしたら? 心無い言葉を浴びてしまうんじゃないか? 考えれば考えるほど、充の事が心配で胸が締め付けられる。 でも幸せになってほしいと思う反面、傷付いて俺のところに帰って来ればいいと思う自分もいる。 最低だ……。 布団に潜り、また溢れてくる涙を拭う。 どうやったらこの浅ましい思いを消して、心から充のことを応援できるんだろうか。いっそ俺ごと消えてしまえばいいのに……と伸之はぎゅっと目を閉じた。 玄関の呼び鈴が鳴る── こんな時間に誰だ……と、時計を見た。 深夜0時。 時計を見て、一日中充のことを考えメソメソと泣きながらベッドの中で過ごしてしまったことに驚いた。 「俺も大概だな……」 小さく呟き、すんと鼻をかむ。こんな時間に訪ねてくる奴なんて下らない用事に決まってる。 こんな状態で出る気にもならず、そう思った伸之は無視してまたベッドに潜った。 それからどのくらい経っただろう。 腹の虫がいよいようるさく泣き始め、イラっとしながらベッドからダラダラと下りた。 「どんなに傷心でも腹は減るんだよな……」 独りごちて伸之は冷蔵庫を漁る。中をいくら眺めたってそこにあるのはいつ買ったのかも覚えていない牛乳が一本入っているだけだった。 昨晩から着たままのスウェットの上からパーカーを羽織り、近所のコンビニへ向かおうと玄関のドアを開ける。 夜風がヒュッと頬を掠め、室内との温度差に思わず身震いをした。

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