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告白
「久しぶり!」
緊張する充と比べて余裕そうな弘樹は、席を立ち微笑む。
「二年……振りくらい?」
あの時の記憶と同じ笑顔で見つめてくるから、照れくさいのと緊張で充は上手く口が回らなかった。
促されるまま席に着き、飲み物を頼む。弘樹は気さくに話しかけてくれるけど、学生時代は仲良くつるんでいたわけじゃない。
「まさかこんな風に呑むことになるとは思わなかったよ。誘ってくれてありがとう」
何を話したらいいのかわからず取り敢えずお礼を言うと、久しぶりにお前の姿を見られて嬉しくなったから……と弘樹は笑ってくれた。
「大して仲良いわけじゃなかったのにな……強引に誘って迷惑じゃなかった?」
テーブルに斜に座っているため、思いの外距離が近く覗き込むようにして見られるのが恥ずかしかった。
「いや……大丈夫」
目をそらすようにそう答えると、店員がビールを持って入ってくる。食べ物もいくつか注文をして、二人でビールで乾杯をした。
「何に乾杯?」
弘樹はいたずらっぽく笑い、充に聞いた。
「久しぶりの再会に……」
何のひねりもない答えを返してしまった、と内心思いながら充は弘樹とグラスを合わせた。
順に料理が運ばれ、それを楽しみながら他愛ないお喋りをする。とても饒舌に話す弘樹の姿を見つめながら、学生の時には気付けなかった話題の豊富さや気遣い、ユーモラスな一面を垣間見れてとても楽しかった。 今までにないくらい気持ちも弾んだ。
でも、やっぱり憧れは憧れのままで……
自分の初恋は目の前のこの男だけれど、今更どうにかなりたいなんて思わなかった。せっかく気持ちよく呑んで楽しんでくれているのに、告白なんかして空気を壊すなんてとてもじゃないけどできないと充は思った。
それにやっぱり嫌悪感を持たれるのが怖かったから。
最初こそ心残りで引きずって来た初恋を終わらそうと思っていたけど、こうやって話をして楽しく一緒の時間を過ごす。充はそれでもう十分だった。
待っててくれるかわからないけど、家に帰ったら伸之にちゃんと話をしよう。会いに行ってよかった、背中を押してくれてありがとうと伝えよう……。
テーブルの上のお互いの手が触れそうな距離にあるのをぼんやりと見つめていたら、不意に弘樹が手を重ねてきて驚いてしまった。
「な……なに?」
強めに手を握られて離すことができない。酔いのせいか、汗ばんだ手の温もりが少し怖かった。
「こんなこと言い出して、おかしいと思うかもしれないんだけどさ……俺、俺さ……お前のことが好きだったんだよ」
充は耳を疑った。
「いや……男同士だけどさ、好きってそう言う意味の好きだから……」
わかってる──
ぎゅっと離してくれないこの手が汗ばんでいるのも、顔を真っ赤にしているのはお酒のせいだけじゃないことも、嫌でもちゃんと伝わっていた。
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