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強引にでも
「彼氏じゃない。……友達、親友」
弘樹にはすぐにわかった。付き合ってはいないけど、充はそいつの事が好きなんだと。
やっぱり俺と同じだった──
あの時自分のものにしておけば……と今更後悔してたってしょうがない。
今この時がチャンスなんだろ?
酔いも少し手伝って、弘樹は大胆になっていた。
せっかくこうやって再会できたのに、このまま他の男に取られるくらいなら強引にでも自分の方へ向かせないと……と気が焦る。水族館で見たあの男も、きっと充のことが好き……。
みすみす逃してたまるかってんだ。
弘樹は飲み直そうと言っていつも利用する店に充を誘った。
そこでなら強引に関係を持つ事だってできる。だいたいの男はそうやってきっかけを作って惚れさせてきた。
上手くいくはず……
店へ向かう途中、充も弘樹のことが好きだったと打ち明けてきた。屈託ない笑顔と少しの恥じらいの表情が何とも言えず可愛くて、否が応でも期待が膨らむ。間違いなく充と自分は付き合うことになると弘樹は確信していた。
店の前まで来る。
充の気が変わって引き返されたんじゃ元も子もないから、わざと手を取り階段を降りた。案の定、店内に入ると雰囲気に驚いた様子で不安な顔を覗かせる。そんな様子も初心な感じで弘樹は堪らなく興奮した。
強引に奥の席へ促し、ソファに座る。勿論充を奥に座らせ自分はその隣、出口を塞ぐようにして腰かけた。並んで座り寄り添い、顔を覗くと少し涙目になっている。薄暗くムードのある照明がそんな充の表情をいやらしく照らしていた。
「とりあえずビールでいいよな?」
「……いらない。烏龍茶でいい」
そわそわと落ち着きなく、店内をキョロキョロとしている。
「ここ奥だし何も見えないよ? それに誰からも見られないから……そんなに気にしなくても大丈夫。本当に烏龍茶でいい? お酒弱いの?」
わざと充の太腿に手を添えてそう聞くと、ビクッと体を強張らせ慌てたようにうんうんと頷いた。
「俺、こういう所……ちょっと…… 」
「ちょっと……なに? 俺のこと、好きなんでしょ? もっと近づきたいって思っちゃダメなの?」
弘樹は太腿から腰に手を回し充を抱き寄せる。キスできそうなくらい顔を近づけジッと見つめた。
店員が飲み物を運んできても構わずに続けていると、恥ずかしいのか慌てて顔を押しのける。頬に触れた充の手のひらが少し汗ばんでいて、緊張しているのがわかった。
「キスくらいいいだろ? ……ちょっとだけでいいからさ」
「いや……無理だから」
無理という言葉に弘樹はカチンときてしまい、強引に顎を掴み噛みつくようにキスをした。驚いた顔をして逃げようとする充の顔を抑え、少しだけ開いた唇にねじ込むようにして弘樹は舌を絡めた。
熱くて柔らかな舌の感触。
観念したのか大人しくなった充は力なく弘樹の胸を拳で叩いた。
「や……だ。なんで……?」
唇が離れると、泣きそうな声で訴える。
「なんでって……俺まだ好きだから。驚かせてごめん、俺たち付き合お?」
愛おしい……
可愛い……
やっと俺のものになる。弘樹は感情が昂りそのまま充を抱きしめ、頬に触れた。
頬を撫で、唇に触れ、もう一度ゆっくりと唇を重ねる。優しく慈しむように舌を絡め、体を弄った。
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