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第10話
仕方なく席に座ると暫くしてチャイムが鳴り、担任が入ってきた。
長谷が戻った気配はない。
チラッと後ろに目をやると、いつの間にか戻ってきたらしく、席に座っていた。
(忍かっ!?)
授業中、長谷はシャーペンを6回、消しゴムを3回床に落とした。
いつも後ろから聞こえていた怪奇現象だと思っていた物音の正体に納得した。
配られたプリントは俺止まりで毎回一枚足らなかった。
今までなんの疑問も抱かなかった。
俺の後ろには誰も居ないと思っていたのだから無理もない。
(長谷、お気の毒に…)
「先生。」
ーーー どうした、氷上。
「プリント、一枚足りないけど。」
ーーー おぉ、悪い悪い。
"教師がそれじゃいかんだろ" と思いながら、回ってきたプリントを長谷に渡した。
「…あ、ありがと……」
「どういたしまして。」
こんな感じで授業が終わって、放課後…
俺は体育館裏に向かった。
昨日とはうって変わって足取りは軽やかで、ルンルン♪と音を立てそうだ。
(待て待て。これじゃ、俺が放課後を超楽しみにしてたみたいじゃないか!断じて違う!!)
爆乳セックスをお流れにした長谷の呼び出しを迷惑に思っている筈だ。
しかし、今日はどうやって楽しませてくれるのかという期待を隠しきれないのも事実だ。
体育館裏に着くと、昨日と同じ場所に長谷を見つけた。
「はーせ。」
「…ひ、氷上…くんッ…」
「あー、先に言っとくけど、今日は逃げるの禁止な?」
「…ぅ、ん…頑張…る…」
「よし。んで、早速本題。俺を呼び出した理由は?」
「…あ…の…昨日の…」
「あぁ、あれな。かなり傷ついた。」
「…ご、ごめ…ん…」
「許す。」
「…いい…の…?」
「俺は、基本ちゃんと謝れるヤツは許す事にしてるからな。まぁ、根には持つかもしれないけど。」
「…あり…がと…」
傷つけられた方はもちろんだが、傷つけた方もそれなりのダメージを受ける筈だ。
感情に任せてつい口走ったり、人によっちゃ手が出たり…
それは、俺にもあるかもしれない。
大事なのは、それを謝れるかどうかだ。
俺はそこが大切だと思っている。
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