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第15話

長谷が俺の両手をギュッと握った。 (手、軟らかッ…) 「よろしくっ!」 長谷は、どもる事なく言った。 長谷の口元が緩んで、頬はくっきりと綺麗なえくぼを作った。 顔の半分以上が、ちょっとやそっとの風じゃ乱れません的なモッサい前髪で隠れた長谷の表情を読み取るのは難しい。 だからちょっとした筋肉の動きとか口元で判断するしかない。 きっと今、笑っているに違いない。 どうしてもその顔が見たくなる。 そっと頬に触れて、前髪を流そうとすると、長谷が慌てた様子で前髪を押さえた。 (長谷さんほっぺ軟らかッ…お肌スベスベ…撫でくり回したい…) 「…長谷、顔見せて…」 とりあえず、どんなヤツをも落としてきたとびっきりのキメボイスでお強請りをしてみた。 「…だ、ダメ…」 「なんで?」 「…嫌われ…たく…ない…」 「バカだなぁ、嫌うわけないだろ?それとも、俺の事顔見たくらいで嫌いになるようなどうしようもない男だと思ってるのか?」 「…思って…ない…」 「じゃ、いいだろ?」 「…」 「はーせ。」 「…うぅ……」 「はーせさん。」 暫く悩んで、前髪を押さえていた手が離れた。 こういう場合、前髪の奥にはそれはそれは可愛らしいお顔が隠れているというのがお約束だ。 長谷の場合もきっとそうに決まっている。 そっと前髪を流して、初めて長谷と目が合った。 「………………き、嫌いに…なった?…」 「ならない。俺は、顔で人を選ぶようなどうしようもない男じゃありません。長谷さん、よーく覚えておくように!」 嘘だ。 俺は、顔で人を選んできたどうしようもない男だ。 流した前髪を元に戻した。 前髪の奥に隠れた顔は、お世辞にも可愛いとは言い難い。 のっぺらぼうとは言い過ぎだが、それくらい特徴のない中の下くらいの顔… 超絶イケメンの俺から見たら、中の下はブサメンの位置付けだ。 どうしても特徴を挙げろと言うなら、頬の上の方に薄っすら浮かぶそばかすと、目の下のくっきり浮かんだクマ。 吸血鬼を思わせる程酷いクマだ。 頑張ってこれくらいだと思う。 長谷は、ボヤボヤ感に似合った顔立ちをしていた。

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