17 / 45

第16話

長谷は、えくぼもあるし、手も頬も軟らかいし、肌はスベスベだし、色白いし、小さいしと、可愛い子が持つ要素満載のブサメンだと判明した。 前髪が元の位置に戻ったところで、俺は気付いてしまった。 (唇が超エロい!ぷっくりしてて超エロい!) 昨日から唇フェチになりそうなくらい長谷の唇ばかり見てるせいかもしれない。 モサい前髪ばかり見ていても楽しくはない。 そうなると、どうしても動きのある口元に目が行く。 ぷっくりした唇とキスをしたら、さぞ気持ちがいい事だろう。 時々見えるピンクの舌を絡めて吸ったら気持ちいいだろうとか、歯並びのいい白い歯をなぞってみたいとか、どんな気持ちいい声を聞かせてくれるんだろうとか、ぷっくりした唇の端から唾液伝ったらエロいとか… 唇だけでここまで妄想を膨らませられる俺は変態で、唇だけで俺にここまで妄想させる長谷は悪い子だ。 「…う、ん……分かった…」 「…」 (付き合ってるわけだし、キスしてもいいよな。いや、別に付き合ってなくたってキスなんて山程してきたし、わざわざ許可なんていらないよな。キスなんてものは雰囲気だろ。…ん?…待て、待て待て…、え…マジ?キスって、どうやってするんだっけ?…俺、今までどうやってキスしてた?…) 妙に意識しすぎてキスの仕方が分からなくなった自分に気付いた。 長谷は、地の果てというか、下手したら地球はおろか大気圏を突き抜けて宇宙の果てまで逃げるタイプだ。 だから、雰囲気に任せるキスは長谷には通用しない。 長谷とキスをするには、許可が必要だ。 「…長谷…」 「…?」 首を傾げる長谷がどうしようもなく可愛いく見える。 (可愛い可愛い可愛い…どうしよう…全部、可愛い。) 「…あー…えーと…その、なんだ?」 「…氷上…くん?…」 「…長谷と、き、キスがしたい…です…」 全身熱くなって、頭から湯気が出そうだ。 こんな台詞は、口にした事がない。 そして、俺の中にはなぜか長谷が降臨している。

ともだちにシェアしよう!