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第18話
こういう欲求を我慢した事がなかった俺が、いきなり "待て" と言われたところで待てるわけがない。
キスしたいと思ったらするし、ヤりたいと思ったらヤる。
「はーせ。」
長谷の頬を両手で包み、親指の腹で頬を撫でる。
三度目に触れた長谷の肌はやっぱりスベスベモチモチだった。
長谷の高さまで身を屈めて、ゆっくり顔を近づけた。
近くで見る長谷の肌は、きめが細かくて白くて綺麗だ。
「…ぇ…あ、の…氷上く…ん……ッ!!」
そっと唇が触れたのは長谷の前髪…
モサい髪のわりに、シャンプーのいい香りがした。
恥ずかしさが込み上げてくる。
唇にするキスなんかよりもずっと恥ずかしかった。
こんなキスをするのは初めてだ。
身体中が熱い。
ダサいところを見られたくなくて、空を見上げた。
「……い、言っとくけど、こんな恥ずかしいキスしたの、長谷が初めてだから…」
「…ぅ…ん………」
「で、長谷さんよぉ…」
「…?…」
「ご感想は?」
「…び…ビックリ…した…」
(………ちーん。)
「…あー、まぁそうだろうな…うん、お察しします。」
俺も自分の行動には驚いているところだ。
譲歩して譲歩して譲歩して譲歩して譲歩しまくって辿り着いた答えが前髪とは…
しかも、この満足感…
(あり得ないだろ!激しく不完全燃焼だろ!!)
おまけに感想を求める始末…
そして、その感想がコレだ。
これも長谷クオリティというやつだろうか。
わざとなのか、天然なのか…
ホント恐ろしいヤツだ。
「…あと…ドキドキした…」
ーーー キューン…
(…あ、あと出しとかズルいですよ、長谷さん…)
「そ、そっか…それは良かった。」
ホントに良かった。
この恥ずかしさがビックリさせただけの不発弾だったとしたら浮かばれなさすぎる。
「…ひ、氷上くん…」
「ん?」
「…だ、…大好き…」
氷上裕太、高校3年生、初夏…
人生初の青春 到来。
(いや、待て待て。俺モテモテだし、彼女も沢山居たのよ?)
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