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第24話

長谷の手はフニフニ柔らかくて、少し冷たい。 熱の時に額にあてられたら、気持ちよく感じるくらいには冷たい。 「長谷。」 「…ぁ、う…ん?…」 「ちょっとおでこ触って?」 「…え?…」 「いいから。ほら、おでこ触って?」 振り返って、少し身を屈める。 「…ど…したの?…」 「はーせ、早く。」 少し戸惑ったようにオドオドする長谷は可愛い。 遠慮がちに近づいて、額にそっと手が伸びる。 前髪を指先で軽く分けてから、あてられた手の平はひんやりしていて気持ちがいい。 あまりの気持ちよさにゆっくりと目を伏せた。 このままキスの一つでもくれたら嬉しいが、長谷には難易度が高すぎる。 「…冷たく…ない?…」 「んー?…気持ちいい…」 目を開いて長谷を見上げると、まだオドオドしていて可愛かった。 ーーー 「氷上君、おはよ!」 ーーー 「おはよー、氷上。」 俺ともあろう者がこの変化をどう受け止めるべきか… ついこの間まで大歓迎だったかわいこちゃんからの朝の挨拶に舌打ちしそうになった。 長谷の手がスッと離れて、ボヤボヤを強めながら一歩二歩と距離が生まれる。 「あぁ、おはよう。」 ーーー 「氷上君、麻友子振ったってマジ?」 「はぁ?そんな噂どっから湧いたんだ?俺があの上等なぱいおつを振るわけないだろ。」 ーーー 「だよねー。アンタ好きだもんね、胸。」 ーーー 「おっぱいばっかり妙にしつこいもんね。」 (あぁ、止めて…長谷さんの前でエグるの止めて…マジ止めて…確かにぱいおつ大好きだけど、長谷さんの前でとか止めてマジ!!数日前までの俺のバカ野郎ぉぉー!!) 「あー、悪い。俺、ちょいと急いでるから、またな。」 普段なら、このまま予鈴が鳴るまで喋ってるだろう。 かわいこちゃんたちも顔を見合わせて首を傾げている。 俺も一緒になって首を傾げたい気分だ。 長谷はといえば、いつの間に10歩くらい先に居て、窓の方を向いて空気のようにボヤボヤしていた。 少し小走りに近づいた。 「長谷、ごめん。」 「…あ、氷上くん…んーん、だい…じょぶ…」 「行こっか。」 「…ごめ、ん…」 「なぜに長谷が謝る?」 「…保健…室…」 「ん?」 「…行かなくて、だい…じょぶ…なのに…」 「…」 「…付き…合わせて…ごめん…」 「いーや、俺こそほったらかしてごめん。」 離れた手をもう一度握り直して廊下を歩き出した。

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