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第25話
相変わらずの武士妻っぷりな長谷を引き連れて、一階にある職員室の少し先の保健室のドアを叩いた。
「どうぞ。」
中から穏やかな優しい声がする。
ガラガラと引き戸を開けると保健室特有の消毒液の匂いが鼻をつく。
真っ白な壁と風に揺らぐ真っ白なカーテン…
椅子から立ち上がり、振り返りざまに飛びっきりの笑顔を溢したのは、この高校のアイドル養護教諭、高嶋清人 は今日も安定の天使っぷりだ。
とにかく可愛いの一言に尽きる。
これが年上で許されるのかと疑う。
「よ、先生。」
「ひ、氷上君!!どうかされたのですか!?お怪我ですか!?」
先生の慌てぶりに思わず苦笑した。
「あー、いや、俺じゃなくて…」
後ろでこぢんまりしていた長谷をズズズイッと、先生に差し出した。
「長谷君。」
「先生、長谷を知ってるのか?」
「えぇ、長谷君は入学してきた頃からの常連さんですから。」
「常連って、そうなのか、長谷?」
「…あ、…う、うん…」
常連…
保健室の常連…
どういう事だ?…
「長谷君、寝ていきますか?」
「…あ、はい…」
「一時間したら起こしますね。一番奥のベッドへどうぞ。」
「…はい…。…あ…の、…氷上くん…あり…がと…」
「こんなのは大した事じゃないだろ。ゆっくり休みな。」
「…う、ん…」
長谷は一番奥のカーテンの中に消えていった。
シーンと静まり返った保健室に、キシッとベッドが軋む音が響いた。
「…さて、氷上君。君はどうしますか?」
「教室に戻るかな。」
「では、授業が終わったら迎えに来てあげてください。」
「あぁ、そのつもりだ。」
「そうですか。…氷上君、もしも貴方が興味本位で彼に近づいているのなら、止めておいた方がいい…」
そう言った先生に、柔らかさはなかった。
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