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第31話
俺は長谷に好きだと言った事がない気がする。
なんか長谷が色々ぴゅあっぴゅあすぎて俺なんかが好きとか言ったらいけないような気分になる。
(つか長谷さん、ベッドの上で正座して前のめりってなんか可愛いくないですか?わざとですか?)
これで手を出すななんて酷な話だ。
これ以上ここに二人で居るのは危険だ。
俺は椅子から立ち上がった。
「長谷、そろそろ教室行くか。」
「…あ、うん…」
「…長谷、あー…なんつーか、頑張ってくれてありがとうな。」
身を屈めて、長谷の耳元で囁く。
「…」
長谷は下頬だけじゃなくて耳もピンクにした。
「長谷、先に出てるな?」
「…ぁ、うん…」
カーテンを開いて外に出ると先生と目が合った。
「先生、長谷連れて帰るな?」
「えぇ。長谷君も少しスッキリとしたでしょうから。」
「先生、俺は…長谷になにをしてやれる?」
「…そうですね。彼が抱える問題は、まだ子どもの貴方にはどうする事も出来ないでしょうね。」
「そっか…」
「けれど、唯一貴方に出来る事があるとすれば、側に居てあげる事…」
「側に?」
「彼の味方になってあげてください。」
「…分かった。」
納得は出来ない。
だけど、先生の言う通り俺はまだ子どもだ。
なにも出来ない事くらい自分が一番分かっている。
だから、今はそれに納得する形を取るしかない。
子どもの俺が唯一出来る事があるとしたら、それを精一杯やる他ない。
出来る事があるだけマシ…
そう言い聞かせた。
「…あ…の…」
長谷がボヤボヤを纏ってカーテンから出てきた。
「あぁ、長谷君。もう具合は大丈夫ですか?」
「…はい…ありがと…ごさいました…」
「長谷、戻ろうか。」
「…うん…」
長谷の冷たい手を握った。
「まったく、見せつけてくれますね…」
「…あ…ぅ…氷上く…ん…恥ずかし…」
「いーの。ほら、行くぞ。」
「…あ…うん…」
長谷の手を引いて保健室を出た。
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