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第35話
長谷はどこに行ったのか…
(考えろ…長谷が行きそうな場所…しっかり考えろ!)
思い付いたのは保健室だ。
それくらいしか思い付かない。
「恭哉、俺、長谷探してくる!」
「はぁ?俺はっ!!」
「知るかっ!!一人で食え!!」
「ひ、ひでぇー!」
喚く恭哉を置いて教室を出た。
向かう先はもちろん保健室だ。
いくら恋愛初心者の長谷とはいえ、彼氏をほっぽって一人でランチとはけしからん。
これは彼氏としては叱ってやらないといけない。
ドスドス怒りの音を立てながら廊下を歩いた。
階段を下り、保健室の前に立ち扉を叩いた。
「どうぞ。」
ガラガラと引き戸を開く。
「先生、長谷居るか?」
ズカズカと保健室に入ると、先生には目もくれずにシャッシャッと一枚一枚カーテンを開いて長谷を探した。
「まったく、なにをしているのですか、氷上君。幸い誰も寝てはいませんが、具合の悪い生徒が居たらどうするつもりですか?」
「…悪い。」
長谷は居ない。
最後の一枚のカーテンをグシャッと握りながら、自分を落ち着けるように息を吐いた。
「一人でいらしたので、てっきりそういうお誘いかと…」
「俺はもうそういうのは卒業しようと今決めたところだ。」
「そうですか、それは残念です。」
「思ってもないくせに。先生って本当、悪い男だな。」
「ふふ、氷上君の腰使いはわりと好みでしたので。」
「それはどーも。でも残念でした、たった今から俺の息子は長谷専用になりましたもので。」
「おやおや。しかし、散々遊んでいた氷上君の息子さんは堪えられるのでしょうか?」
「やんちゃな息子には躾が必要だろ?たまには我慢させないとな。」
「確かにそうですね。」
「あぁ。」
「純粋で可愛らしい長谷君が貴方の立派な息子に喰い荒らされるかと思うと居たたまれない気分です…」
「ばっ、変な言い方すんなって!優しくするつもりだし!俺は長谷には甘々なのっ!!」
「そう興奮すると血圧が上がりますよ?…ところで、保健室になにかご用ですか?」
「おぉ、そうだった。長谷が行方不明だ。」
「長谷君ですか?」
「あぁ。保健室だと思ったんだけどな…」
「長谷君なら、多分校舎裏ではないかと…」
「校舎裏?」
「えぇ、毎日通っていますよ。大切なお友達が居るとか言っていましたね。」
「友達?」
長谷に友達…
それはあり得ないと思ってしまう自分に苦笑した。
ボヤボヤで、存在を消しながら学校生活を送る長谷が学内に友達を作るなんて想像ができない。
「サンキュー先生、行ってみる。」
「いえいえ。見つかると良いですね、長谷君。」
「あぁ。」
俺はダッシュで保健室を出て、校舎裏に走った。
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