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第38話

長谷には秘密だが、実は昼休みはあと30分ある。 今から食べ始めても余裕というわけだ。 丁度いい段差を見つけてそこに座って一生懸命準備する長谷を見守る。 可愛くてついついニマニマしてしまう。 準備を終えた長谷が俺の正面の地べたに座ろうとした。 「はーせ、隣おいで?」 「…ぇ…」 「そこだと汚れるだろ?」 「…う…ん、じゃぁ…」 んしょ…と長谷が立ち上がり、ちょんこりボヤボヤ横に座る。 「へー、長谷の弁当豪華だな?」 膝に乗せた弁当箱の中身を覗く。 白米に乗った梅干し、卵焼きにミートボールにタコさんウインナーにブロッコリー、トマト、間仕切り代わりのレタス。 「…そ…そう…かな?…」 「俺なんて毎日コンビニのおにぎりだしな。」 「…知っ…てる…ずっと、見ていた…から…」 「マジか!?うっわ、恥ずいな。」 「…健康に…悪いな…って…」 「確かに。朝、昼、晩とコンビニ飯だからな。」 「…ぇ?…」 長谷がゆっくりと顔を上げた。 「まぁ色々と事情があって、独り暮らししてるっつーか。」 「…独り…暮らし?…」 「そ。独り暮らし。」 「…凄い…ひ、氷上…くん…凄い…よ…」 「いや、別に自慢出来る事じゃないけどな。」 「…そ…なの?…」 「そんな事より、早く食おう。時間なくなる。」 「…あ、う…ん…」 なんとなく話をそらしたのは、話したくなかったからじゃない。 その理由があまりにカッコ悪かったからだ。 ガキの時に両親が離婚して、中3の時に俺を引き取った母親が再婚。 義父との関係も悪くはない。 でも、母親が妊娠してなんとなく居づらくなったから家を出て高1から独り暮らしをしているっていうだけの話だ。 独り暮らしは悪くない。 連れ込み放題、ヤり放題、金は出してもらえるし、なに不自由ないお気楽生活だ。 「俺、卵焼き食いたい。」 「…あ…の、これ…失敗作…だから…」 「失敗作でもいいし。俺、卵焼き好きなんだ。」 「…た、卵焼きは…また…今度…」 「えー、食いたいー!」 「…これは、ダメ…また今度…綺麗に…出来て…から…」 「へー、今度があるんだ?」 「…うぅ…ぼ、僕ので…よければ…」 長谷の下頬がピンクに染まった。 なんか色っぽくて、好きだ。 (まさか、この短期間でこんなにメロメロにさせられるとは…長谷さん恐るべし…) 「大歓迎です。」 また今度… その言葉が凄く嬉しくて、ガラにもなくその日を待ち遠しく思ってしまった。

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