40 / 45

第39話

長谷の超絶うまうまサンドウィッチを堪能し、楽しい楽しい昼休みが終わって、あっという間に放課後を迎えた。 「はーせーさん。帰りましょ?」 「…あ…うん…」 割引券もゲットして、準備万端の俺。 足元もルンルン♪踊っている。 「あれ?長谷さん気乗りしない感じか?」 「…そ、そんな!…楽しみ…」 「そりゃ良かった。」 ボヤボヤ長谷さんは、ノロノロと教科書と筆記用具を鞄に詰めている。 (うんうん、可愛いぞ、長谷さん。ノロノロ長谷さん可愛いぞ。) 「…あの…」 「ん?」 「…どこに…行くの?…」 「秘密。ヒントをあげるとすれば、あまーくて美味しいものを食いに行きます。」 「…あまーくて…美味しい…なんだろ…」 「楽しみにしときな?」 「…う…ん…」 コクコクと首を立てに振る長谷は、なんだかおもちゃみたいだ。 鞄に詰め終えた長谷の手を握って教室を出た。 U字階段を下りて、下駄箱で靴を履き替える。 校庭を通って、門を潜れば、俺達の放課後が始まる。 「長谷はさ、どっか行きたいとこあんの?」 「…え?…」 「参考までに。これからは毎日一緒に帰って、放課後デートだろ?毎回毎回同じとこじゃ飽きるしな。」 「…ぼ、僕は…氷上くんと、居られるなら…どこでも…」 「んー…残念。シミュレーションゲーム的に考えたら、その回答じゃ俺の好感度は上がらないな。」 「…シミュ…レーション?…」 「長谷ってあんまゲームとかしない感じか?」 「…ゲームは…好き…」 (ほうほう、新しい長谷さん発見!) 「長谷はどんなゲームするんだ?」 「…え?…あの…秘密…」 「あ、秘密なんだ?」 (もしや、ぴゅあっぴゅあと見せかけて、エロゲ積んでるとかか?…って、それは俺か!三次元では飽き足らず、二次元にまで手を出してんのは俺か!!) 「…う…ん…子どもみたいで…笑われる…かも…」 「別に笑わないけど?」 「…秘密…」 ムッと長谷の唇が尖る。 表情は見えなくても、唇は正直な長谷。 「分かった分かった。そう怒るな。」 「…どうして…分かるの?…」 「ん?」 「…お、怒って…るって…」 「んー、秘密。」 うっかり唇とか言って、明日からマスクをして来られても困る。 それこそ前髪星人だ。 「…意地悪…だ…」 「長谷も意地悪だろ?」 「…そ…だけど…」 「おあいこって事で。…つか、長谷?」 「…な、なに?…」 「隣来いよ。」 相変わらず武士嫁っぷりな長谷。 正直、少し淋しく感じる。 「…ダメ…」 「なんで?手、痛いし、俺は長谷と並んで歩きたい。」 「…痛い……あ、ごめ…ん…手、離して?…」 「それは嫌。いいから隣に来なさい。」 グイッと軽く長谷を引くと、トットットッとつんのめりながら長谷が隣に来た。 「…強引…」 ムッと唇を尖らせながら、ググッと首を上げて俺を見上げた。 「それ、俺の十八番(おはこ)なもんで。長谷にはさ、俺くらい強引な男がいいと思うわけですよ。」 実際、俺を見てるかは分からないが、角度的にはそうだと思う。 少し首が苦しそうだ。 結構な身長差だから仕方がない。

ともだちにシェアしよう!