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第41話
手繋いだまま街に出た。
長谷のボヤボヤパワーのおかげもあって、誰も俺達を見ないし怪しがりもしない。
長谷は一人でそわそわしている。
向かったのは恭哉のバイト先のクレープ屋で、インスタ栄えするトッピングが話題の店だ。
案の定、店に入りきらない客が外まで列を伸ばしてならんでいた。
並んでるのはキャピキャピ女子中高生やカップルだらけだ。
「…クレー…プ…」
「長谷はクレープ嫌いか?」
「…んーん…好…き…」
「そりゃ良かった。」
暫く並んで、店内に入ると良い匂いが鼻を擽る。
「…ここ…」
「ん?」
「…入って…みたかったから…嬉し…」
「そっか、連れてきて良かった。」
「…う…ん…」
長谷の口元が笑った。
やっぱり長谷は笑うとえくぼが可愛い。
「長谷は食べたいの決まったか?」
「…んー…と…」
ちなみに悩みまくりな長谷も可愛い。
「…チョコの…でも、いちごも…美味しそ…あ、でも…バナナも…」
(俺の長谷さんは優柔不断ちゃんなわけね。)
「よっし!!じゃぁ、いちごの生クリームのやつとチョコバナナにしよう!これならチョコもバナナも食えるだろ?」
「…そっ…か!…」
(気付くの遅いぞっ!俺の長谷さんめっ、可愛いでないのっ!)
「…あ、でも…氷上くん…の…」
「俺?俺はチョコバナナにしようと思ってたから気にすんな。」
「…ほん…と?…」
「ホントホント。ほら長谷、前進みな。」
「…あ、う…ん…」
甘い匂いに食欲を掻き立てられながら、暫く待つとようやく俺達の番だ。
いちごとチョコバナナを注文した。
出来合いのものじゃなく、きちんと目の前で焼いてトッピングしてくれるのがいいところ。
混む店なのに、そこは徹底してる。
先に支払いを済ませた。
割引券もあるし、初デートだし、今日は俺のおごりという事で。
薄く焼かれた生地に、これでもかとパンパンにフルーツと生クリーム、チョコソースが乗る。
長谷のモサモサがソワソワ小さく揺れている。
(出来上がりが待ち遠しいってか?可愛いねぇ、可愛いなぁ、長谷さんっ!!)
トッピングが終わり、生地がくるくる巻かれた。
最後にコーンスリーブをでっかくしたような紙に入れて差し出された。
それを受け取ってとりあえず店内を出た。
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