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第7話
だから、稑くんがどんなに僕に冷たくてもいいと思ってしまう。
これは諦めとかではなくて、本当にそう思う。
稑くんはどう思ってるか分からないけど、僕は稑くんに不満はない。
確かに少しくらいは優しくしてほしい時もあるけれど、稑くんは少し不器用なだけで、優しい人だという事を僕はきちんと分かってるつもりだから…
「紘二、チョコちゃんのエサ買うからスーパー寄るぞ。」
「え、もうなかった?」
「あぁ、今朝ので最後だ。」
「こないだ買ったばっかりじゃなかったっけ?」
「…」
「稑くん、またおかわりあげたね?」
「し、仕方ないだろ?…チョコちゃんがくれくれって鳴くんだ。」
「ろーくーくーん?…」
じっとりと見ると稑くんがシュンとした。
可愛い…
だけど、ここは厳しくしないといけない。
チョコの命に関わる事だから。
ちなみに、チョコというのは飼い猫の名前だ。
同棲を始める為に引っ越しをした日、買い出しに行った稑くんが拾ってきた。
「悪かった…」
「エサのあげすぎはチョコの身体にも悪いんだから、チョコが大切ならあげすぎたら駄目だよ。分かった?」
「ん…」
こうは言ってるけど、もうこのやり取りは数えきれないくらいしている。
稑くんはチョコに激甘だ。
まさに猫可愛がり。
「本当に?」
「あぁ…」
「分かったよ。約束だからね?さ、スーパーに行こうか?」
人前では、稑くんは嫌がるから繋いだ手を離してスーパーに入った。
本当は離したくないけれど、稑くんが嫌がる事はしたくない。
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