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第9話

独り占めにしたいだなんで、僕の我が儘だろうか… 「あのさ稑くん。…少しだけ、遠回りして帰らない?」 「は?」 「少しだけ。少しでいいから、稑くんを独り占めしたいな…」 「…」 「駄目、かな?」 「勝手にしろ。」 「ふふ。では、お言葉に甘えて。」 「…」 僕は、改めて稑くんの手を握った。 そして、そのまま公園に入った。 公園一周分の時間… それは、僕のものだ。 「稑くん、ありがとうね。」 この手を振りほどかないでくれて… 僕の我が儘に付き合ってくれて… 今が幸せすぎて… それを壊したくなくて… 話したい事があった筈なのに… 結局、切り出す事ができなかった。 「稑くん…」 「なんだよ。」 「好きだよ。」 「あっそ…」 「うん。」 その後は、ずっと無言のままだった。 繋いだ手から温もりを感じるだけ… 僕には、それだけで十分だった。

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