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第18話

紘二の事ばかり考えていたら急に紘二の顔が見たくなった。 こんなんで本当に紘二から離れられるんだろうか… 依存か… 愛か… もしくは、甘えか… 愛であってほしい… そうは思うけど、これは確実に甘えだ。 自分でも理解できている。 紘二の優しさに甘えるだけ甘えて、俺からは何も与えない。 今の俺には… 紘二に何も返せない。 キスをする事すらも怖い… 何も感じなかったら… そう考えると恐ろしい… キスの感覚とか… 気持ち良さとか… 全く感じなかったら… そう思うと怖くて仕方がない。 症状が出てからキスもフレンチ止まりだ。 俺と紘二は元々キスとかセックスとか頻繁にする方じゃない。 でも、流石にそろそろおかしいと思っている筈だ。 だから今日も様子を伺うみたいなキスをしてきたんだと思う。 紘二はキスもセックスも優しい。 あの人とは違う。 乱暴な事もしないし、俺の気持ちを無視したような求め方もしない。 だから今はそれが余計に辛い。 気付いたら俺は紘二の部屋の前に立っていた。 最近は別々に寝起きしている。 紘二は近頃残業が多くて帰りが遅い。 俺は逆に朝早い。 夜中に俺を起こしたら悪いからと別々に寝る事を提案したのは紘二だ。 紘二はそういう奴だ。 自分も疲れてる筈なのに、俺を気遣ってくれる。 ドアノブに手をかけようとした時、扉が開いた。 急な事に驚いてドアノブから手を離すと目の前に紘二が立っていた。 「…稑くん?」 紘二も驚いた顔をして俺を見ていた。 「…」 「どうしたの?」 「あ、いや…、チョコちゃんのおやつを取りに来ただけだ。」 適当に嘘をついた。 紘二の顔が見たくなっただなんて… 言わない… 言いたくない… 言えない… 絶対に。 「泣きそうだよ、稑くん。なにかあったの?…」 「泣く?…そんなわけないだろ。俺が泣くなんて、あり得ない。」 「でも、稑くんらしくない顔をしてたから…」 俺らしい… 「俺らしいってなんだよ…」 その言葉は驚く程俺を苛立たせた。 紘二が俺らしさなんて知るわけがない。 俺は隠し事ばかりだ。 あまりに隠し事が多すぎて、自分でも見失いそうになる。 「え?」 「俺らしいってなんだよ!お前に俺の何が分かるんだよ!!」 何も知らないくせに… 何が俺らしいだ… ふざけるな! そう言えたらどんなに楽か… 紘二が俺を知らないのは当然の事だ。 でも、紘二だって何も聞かない。 だから、同罪だ。 そんな風に考える俺は… 狡い…

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