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第19話

俺の言葉に紘二が眉を寄せた。 そして、ギリギリと強く手首を掴まれ、紘二の部屋の中に引き込まれて、その勢いのままベッドに押し飛ばされた。 紘二は普段こんなに乱暴な事はしない。 今俺の前に居るのは… 誰だ… 紘二は… 俺の知らない顔をしていた。 パタンと扉が閉まる音はあまりに鈍く聞こえて、耳の奥に残った。 「稑くん、僕が君の事なんて分かるわけないじゃない。」 「ッ…」 「だって、稑くんは何も話してくれないでしょ?」 知りない顔をした紘二がジリジリと近寄って来る… 怖い… 「それは紘二が…」 「僕が?」 「紘二…が…」 逃げようにもシーツ足を捕られて上手く動けなかった。 もたつきながら後退りする事しかできなかった。 「言いなよ、稑くん。僕が、なに?…」 「き…、聞かないから…紘二だって、聞かなかっただろ…」 声が上擦って、身体が震え出した。 「稑くん、震えてるね?…どうしたの?…いつもみたいに言ってみなよ、寄るなとか、暑苦しいとか…」 怖い… 怖い怖い怖い… 「紘二…」 「ん?…扉、ちゃんと閉めてあげたでしょ?チョコに見られたくないっていつも言うから。」 「紘二…、止め…」 ギシッとベッドが沈む音と共に身体に重みを感じた。 「今日はね、稑くん…拒否しても無駄だからね。…扉、閉めてあげただけ有難いと思ってね?」 「ふざけッ…嫌だ、どけよ、紘二ッ!」 どんなに暴れても無駄だった。 両手首を押さえ付けらた。 紘二は片手しか使ってないのに敵わないなんて… ーーー 「稑くんは手が大事なんだから危ない事はしないで?」 こんな事を言っていた紘二がギリギリ音が鳴る程強く俺の手を押さえ付けている。 ただただ怖かった… 見上げた紘二の顔は… まるで、悪魔のようだった。

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