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第24話

二人のやり取りが落ち着き、柊さんが俺を見た。 「まぁ、とりあえず二人共座れ。試食会だ。腹が減っては戦は云々っつーだろ。」 柊さんに促されてソファーに座った。 そして持っていたお皿をテーブルに置いた。 柊さんの料理は本当に美味しい。 幸せな気分になれる柊さんの料理が大好きだった。 でも、今の俺にはそれを味わう事ができない。 色彩豊かで、見るからに旨そうなこの料理… 昔なら食欲を誘ったんだろうけど、食事は今の俺には苦痛でしかない。 「相変わらず利くんの料理は食欲を誘うね。美味しい美味しい。」 「まだ食ってねぇだろ。食ってから言え。」 「見ただけで分かるよ、美味しいか美味しくないかなんて。」 「へーへー、そうかよ。…前川、まずお前食ってみろ。」 そう言って柊さんは俺の前にフォークを置いた。 「え、あ、はい…」 俺はフォークを手に取り、サーモンの前菜に手を伸ばした。 どういう反応をしよう… 頭の中はその事ばかりだ。 きっと美味しいに決まってる。 味の感想を求められたら… 生意気にも事細かに感想を述べていた昔の自分に後悔した。 同じような細かい感想を求められたら… 冷や汗が額に滲むのが分かった。 フォークを口に運び一噛みする。 やっぱり味はしない… 「美味しい…です、凄く。」 「はぁ、…やっぱりか…」 柊さんが溜息をついた。 「利くん、俺も食べていい?」 「あぁ、前川に感想聞かせてやれ。」 次にオーナーがそれを口にした。 「げほげほ、な、なにこれ!こんな辛いのは誰も食べれないだろ。けほっ…辛っ…よく食べられたな、前川。」 「ったく、どの口が見れば分かるとか言ってんだよ、いい加減なヤツ。…そういうわけだ、前川。」 柊さんがオーナーにペットボトルを渡しながら言った。 柊さんは… 薄々気付いていて、その確信を得る為に試したんだと思う。 頭の中がグルグル回り出して、冷や汗が伝うのが分かった。

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