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第29話
- 紘二side -
稑くんが飛び出して行って一週間…
当然ながら、稑くんは帰って来ない…
心配だからといって、お店に顔を出す勇気もない。
稑くんの顔を見るのが怖い…
「はぁー…やっぱ僕ってヘタレだよねぇ…」
しゃがみこんでチョコにエサをやりながら溜息をついた。
この一週間、チョコは僕に優しい。
慰めてくれようとしてるのか、今までのツンツンが嘘みたいに優しい。
慰めてもらう権利なんて僕にはないのに…
稑くんは今、何処で何をしているんだろう…
毎日毎日、稑くんの事を考えながら生活している。
稑くんのあの泣き顔が忘れられない…
あんな顔をさせた罪悪感に押し潰されそうだ。
もう二度と見たくない…
あんな顔が最後だなんて…
いつもの不機嫌な顔でいいから…
もう一度、稑くんの顔が見たい。
「稑くん…」
駄目だ…
名前を口にしただけで泣きそう…
「あーもう!!しっかりしないと!」
自分に渇を入れるように頬を叩いた。
赤くなる程強く。
玄関に行く途中、僕の寝室が嫌でも目に入る。
あの日以来、あの部屋に入る気になれなくてリビングで寝起きしている。
料理も作っていない。
コンビニのお弁当ばかりだ。
ここは、寝る為だけの家になってしまった。
たったの一週間で此処まで生活が変化してしまうなんて…
稑くんの気配がしないのに、ここには確かに稑くんが居たという痕跡がある。
だから…
居たくない…
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