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第30話

私生活が荒んでいるせいか、仕事も上手くいっていない。 普段はしないような細かいミスを連発したり、会議時間を間違えて遅刻したりして、上司は毎日め怒られている。 追い討ちをかけられているようで、ヘコむ… 稑くんは、元気かな… お財布も携帯も持たないで出て行ってしまって… 大丈夫かな… 少し… ほんの少し外から様子を見るだけでも… 気付いた時には、稑くんのお店の前に立っていた。 僕は一体、何をしているんだろう… それに、何故かお店は閉まっていた。 お店の前のポールには、一週間お休みすると貼り紙がしてあった。 そう言えば、言ってた気がする… 僕と稑くんの休みが被る事は滅多にない。 お正月と、上手くいけば夏休みが1日2日被るか被らないかってくらいだから、とても貴重な休みの筈だった。 「はぁ…」 「よう、犬っころ。…と言う名のレイプ未遂犯。」 項垂れていた僕の肩を誰かが叩いた。 「ひわわゎッ!!」 驚いて振り返るとコック服を来てゴミ箱を持った金髪の少し怖そうな人が立っていた。 「なんつー声出すんだ、お前は。」 「す、すいません、びっくりして…」 「こっちがビビる。」 「あの…えーと、どこかで?」 相手は僕を知ってる様子だった。 取引先の関係者?… 色々と記憶を辿ってみたけれど思い出せなかった。 だから失礼を承知で聞いてみた。 「あー、直接会った事なかったよな。俺は柊利彰。前川の同僚だ。」 「あ、えと、僕は…」 「自己紹介はいいって。お前は犬っころ以外の何者でもねぇから。」 「い、犬?…」 「前川の犬っころだろ?」 「犬になったつもりはないですけど…」 暫くの沈黙… なんかこの人… 凄く苦手だ… 「あのよ、そろそろ前川どうにかしてくれねぇ?」 「え…」 「俺と俺の恋人の愛の巣に転がり込んでるんだわ、今。現在。進行形で。」 「……そうだったんですか?」 少し安心した。 稑くんの安否が分かった。 「明後日コンクールなんだけどよ、この一週間セックスできずに俺は溜まりすぎて大変なわけ。このままじゃコンクールどこじゃねぇ。」 なんなんだろう、この人… 公衆の面前で… しかも、かなり大きい声で… 「…」 「俺ん中はな、今ムンムンムラムラ大騒ぎだ。…つか、それはいいとして、俺はな、自分の為でもあるけど、何としても最愛の恋人の為に受賞したいと思ってる。」 「迷惑かけて…すみません。」 「幼稚な喧嘩に巻き込まれんのはゴメンだ。連れて帰れよ、前川の事。」 「でも…」 「長引けば長引くだけ拗れるぞ。」 「分かってます。」 「とりあえず、俺も片付け終わって帰るとこだし、ちょっと待っとけ。」 「え、あ…」 柊さんはそう言うとゴミを手早く捨てて店内に入って行ってしまった。

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