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第32話

稑くんは、僕が行ったところで受け入れてくれるだろうか… もし、拒絶されたら… そう考えると怖くて仕方ない。 でも、いつまでもこのままじゃいられない事くらい分かってる。 僕もそろそろ… 本気、出さないといけないのかもしれない。 稑くんにちゃんと謝って、あの日を塗り替えるみたいに優しく触れたい… 「柊さん…」 「んー?」 いつの間にかテーブルに並んでいたスパゲッティを頬張りながら、柊さんが僕を見た。 「稑くんを…連れて帰っても、いいでしょうか?」 「あぁ、大歓迎だ。…つかやっぱ俺のパスタが一番旨いな。ま、当然だが。分かっててもたまーに恋しくなるんだよな、ファミレスの味が。」 「ぷッ。」 「おいこら!お前今笑っただろ!?」 「笑ってませんよ。」 「笑った!」 正直というか… 自由というか… 「はい、笑いました。」 「ったく、失礼なヤツだ。実際マジ俺の方が旨いから今度食いに来いよ。」 「知ってますよ。何度も食べてますから。」 「でも、前川のドルチェ目当てだろ?今度は俺の料理目当てで来いって話だ。」 「それは無理です。稑くんのドルチェに敵うものなんて、僕の中には存在しませんから。」 「はぁー?お前の惚気話なんかに興味ねぇよ。黙ってコーヒーでも飲んでろ。」 「なんかそれ、酷いです。聞いてくださいよ。」 「うるさい!!俺はな、人の惚気話が一番嫌いだ!」 柊さんは… 激しく面倒な人だ。 でも、凄く良い人… 「柊さん…」 「あ?」 「ありがとうございます。」 「な、なんだよ、急に。」 「稑くんの事…」 「別に。俺はなんもしてねぇし。」 柊さんの顔が少し赤くなったように感じた。 それがなんだか可愛くて、ノンケだった恋人さんが柊さんを好きになった理由も分かる気がした。

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