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第36話

その後、二人に丁重にお礼を言ってマンションを出た。 稑くんは、黙ったまま僕の少し先を歩いた。 「紘二…」 「うん?…」 先に重い口を開いたのは、稑くんだった。 本当なら僕が先にしなくちゃいけないのに、稑くんに先を越されてしまった。 「チョコちゃん、…元気か?…」 「うん、元気だよ。…でも少し淋しそうかな。困った事にあのチョコが僕に優しいんだよ。」 「そうか…」 しまった… ペラペラと喋りすぎた気がして少し後悔した。 僕は今、普通にその後、二人に丁重にお礼を言ってマンションを出た。 稑くんは、黙ったまま僕の少し先を歩いた。 「紘二…」 「うん?…」 先に重い口を開いたのは、稑くんだった。 本当なら僕が先にしなくちゃいけないのに、稑くんに先を越されてしまった。 「チョコちゃん、…元気か?…」 「うん、元気だよ。…でも少し淋しそうかな。困った事にあのチョコが僕に優しいんだよ。」 「そうか…」 しまった… ペラペラと喋りすぎた気がして少し後悔した。 僕は今、普通に稑くんと話せるような立場じゃないのに… 「うん…」 「…」 チョコの話題の後、また暫く無言が続いた。 今度は僕が口を開いた。 話す内容なんて特にない。 ただ、無言が堪えられなくなっただけだった。 「あの、稑くん、…こないだの事なんだけどね…」 「待て、紘二。…それは、部屋に帰ってからがいい。」 「うん、…分かった。」 「…」 稑くんが早足になった。 元々稑くんは歩くのが早い。 だから、トロい僕は隣を歩こうとするだけでいつも精一杯で、周りが見えてなかった。 多分、それは気持ちの上でも同じだったんだと冷静に稑くんの背中を見ながら思った。 僕は、いつだって必死だった。 そして、いつの間にか見失っていた。 隣どころか、その背中すら見えなくなっていた。 今頃気付くだなんて… 僕は… 馬鹿だ。 あまりにカッコ悪い自分に泣きそうになった。 僕と稑くんの間が、更に開いていく。 でも冷静になれた今、その距離を穏やかな気持ちで見る事ができた。 稑くんは、先を歩いていてもいつも隣に居た。 それに気付いてなかった僕はただただ追いかけ続けた。 どんなに追い付こうとしたって、その先に稑くんは居ないのに… 稑くんの姿形は前を行くけど、心はいつも隣にあった筈だ。 やっぱり… なんだか少し泣けてきた。

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