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第37話

- 稑side - 紘二が迎えに来た。 あまりに急な事に、どんな感情よりも先に戸惑いの方が大きかった。 それに、紘二が迎えに来るという選択肢は俺にはなかった。 俺は一体いつからこんな勘違いをしていたんだろうか… 紘二は俺が居ないと駄目だ… 俺が先を歩いて導いてやらないと紘二は動けない… 俺が居ないと… 俺が… 俺が… 俺が… いつからこんなワンマンプレイをしていたんだろうか… 気付いた時には、隣に紘二は居なかった。 いつから隣に紘二が居ないのか分からない程先を歩いてきてしまった。 ずっと握られていた暖かかった筈の手も今ではすっかり冷えきっていた。 その手を暖める事すらも怖くてできない。 どれだけの間、紘二が隣に居なかったのか分かってしまうから… ただただそれが怖かった。 立ち止まれば良かった。 今更後悔しても遅い。 俺がどんなに先を歩いても紘二は必死に追いかけてきてくれる… 息を切らしながら俺の隣を歩いて、その暖かい手は俺を絶対に離さない。 俺はただ確信したかっただけだ。 紘二は俺を捨てないと… 俺がどんな事をしても絶対に離れたりしないと… 生まれた時から捨てられ続けた俺は試さずにはいられなかった。 どんなに試したところで、絶対なんてないと分かっていながら、試さずにはいられなかった。 信用してるとかしてないとかじゃなくて… 安心したかった。 安心できる場所が欲しかった。 その場所はいつだってずっと存在していた筈だ。 自分で失うような真似をした。 立ち止まって振り返った時に紘二が居なかったら… 隣どころか後ろにすら居なかったら… 怖い… 怖い… 怖い… 振り返るのが… 怖い… 紘二、怖い… 俺は、どうしたらいい… 本音と建前なんてものは取っ払ってなりふり構わず走り出せたらどんなに楽か分からない。 自分で生きづらくしてしまった。 苦しい… そんな時に無条件に暖めてくれる手は俺の人生に存在しない。 そう思っていたのに… 一時的なものじゃないその温もりを俺は知ってしまった。

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