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第38話
何をどう話せばいいのか分からないまま家に着いた。
俺が本当の自分を曝け出しところで、紘二は受け入れてくれるだろうか…
本当は、甘えたくて甘えたくて仕方がない俺を受け入れてくれるだろうか…
「稑くん、いつまで玄関に居るの?他人の家じゃあるまいし、上がりなよ。」
「あぁ…」
本当は紘二に "稑くん" と呼ばれるのが好きだ。
そんな事、一度だって言ったは事ないけど…
特別な気がして嬉しかった。
「ほらチョコ、稑くん帰ってきたよ。良かったね。」
チョコちゃんは大人しく紘二に抱かれていた。
紘二にはツンデレだったチョコちゃんのこんな姿は初めて見たかもしれない。
チョコちゃんは元々紘二が大好きで…
俺に懐いていたのはあくまでもポーズで…
だから、これが本来の姿なのかもしれない。
好きな者に対して素直になる事…
俺が不在の間に、どうやらチョコちゃんに先を越されたらしい。
「部屋…」
「え?」
「汚ないな。」
「あー、うん、ごめんね。忙しくて余裕がなかったから。それに、なんかやる気が起きなくて…」
紘二は苦笑して見せた。
「いや、なんとなく予想はついてた。」
「料理もね、全然しなかったんだよ。コンビニのご飯はゴミが増えて良くないね。あ、でも、意外に美味しかったけどね。」
良く見ると部屋にはコンビニ袋がいくつも転がっていた。
紘二がコンビニ弁当を食べてるなんて驚きだ。
一人暮らしを始めてから毎日自炊していると言っていたし、一緒に暮らし始めてからも基本的には毎日紘二の手作りを食べている。
そんな紘二がコンビニ弁当…
どれだけ荒んだ生活をしていたんだろうか…
「とりあえず、片付けるか。」
「そうだね。これじゃ落ち着いて話せないもんね。」
話…
それに困って片付けを提案してみたが何の時間稼ぎにもならない。
紘二が持ってきたゴミ袋に散らかったゴミを集めた。
なんだか空気も悪い気がして窓を開けた。
空気云々じゃなくて、只俺が息ぐるしかっただけかもしれない。
「…」
「何か気の巡りが悪かったのが良くなったかも。窓も開けていなかったし。僕は気にしてなかったけど、チョコに悪いことしちゃったなぁ…」
紘二がゴミ袋を結びながらまた苦笑した。
多分俺と同様、息ぐるしかったんだと思う。
紘二の口からこぼれる言葉はどれもこれも意味を持たない。
いや…
紘二だけじゃない…
俺の言葉も同じ…
まったく、意味を持たない。
その場しのぎの言葉だ。
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