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第39話

暫くは、探り合うような会話が続いた。 それすらも底をついて、部屋にはチョコちゃんの足音だけが響いた。 特になにかをしたわけじゃない。 それなのに身体が重い… 精神的疲労… 「稑くん…」 「ん…」 「こないだの夜の事…」 「…」 「ごめんね…」 「いや…あれは、紘二だけが悪いわけじゃない…」 「あれは、…僕が悪いよ。子どもじゃあるまいし、感情に流されて…あんな酷いこと…」 「でも、最後までしなかったろ?…紘二が謝るなら、俺も謝る。…ごめん…」 「やだ、止めてよ、稑くん。稑くんに謝られたら、僕は困るよ…」 このままだと永遠とこのやり取りのループだ。 俺はもちろんだが、紘二も見た目に反してなかなかの頑固者だ。 外食をするとどっちが金を払うかで100%揉める。 「分かった。じゃぁ、許す。」 「だ、ダメだよ、そんな簡単に…」 「簡単なわけないだろ。…俺は怒ってるわけじゃない。只、…怖かった。」 「うん…ごめん、怖がらせて、ごめんなさい…」 蚊の鳴くような声で何度も謝る紘二の側に行って抱き締めてやりたい。 でも、できない… これが… 俺と紘二の距離だ。 5、6歩の距離が酷く遠く感じる。 でもこれは、目で見える距離じゃない。 心の距離だ。 こんなに遠いのに、離れたくない。 離れてるに等しい距離なのに、認めたくない。 紘二はこの距離に気付いているんだろうか… もし気付いてるとしたら、どう思っているんだろうか… 知ったからといって、なにができるわけじゃないし、どうなるわけでもないけど、気になる。 紘二は… 俺をどう思ってるのか…

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