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第40話
ゆっくりと紘二が近付いてくる…
後退る暇もなかった。
いや、後退る理由がなかった。
気付いた時は、紘二の腕の中に居た。
「もういい。…紘二が迎えに来てくれた事、かなり戸惑ったけど、…でも、嬉しかった。だから、もういい。」
以前の俺なら絶対に言わない。
でも…
自分の気持ちに素直になろうと決めた。
人を試すような事はもうしたくないと思った。
だから…
身を委ねた。
「稑くん…」
「ん…」
その胸にスリッと顔を埋ませて甘えた。
気持ちがスッと楽になっていくのを感じた。
紘二の指先が俺の髪を撫でた。
「稑くんはズルい。…こんな風に甘えられたら、言えなくなっちゃうじゃない…」
「ごめん、俺はズルいんだ。本当は、凄くズルいんだ。」
「稑くん、…僕は、稑くんに話がある。」
「ん…俺も、沢山ある。紘二に言いたい事、沢山ある。」
「僕からで、いい?…」
「あぁ…」
紘二の声は少し緊張感があるせいか、重たく感じた。
それは、第六感というか…
別に俺はそういうのに敏かなタイプでもないけど、なんとなく…
酷い胸騒ぎがする…
ザワザワしていて気持ちが悪い…
この次に紘二から発っせられるだろう言葉に不安を感じだ。
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