42 / 81

第41話

伝わってくる心音が早い。 そのペースに合わせて、俺の心音も早くなった。 「………海外出向がね、決まったんだ。」 「え…」 「日本の会社に籍を残したまま行くから、いずれはまたこっちに帰って来られると思う。いつになるかは、分からないけど…」 「海外って…それ、いつ決まった話だ…」 「1ヶ月前…」 「なんで!なんでそんな大事な話…」 自分がしてきた事を棚に上げて、一体どの口がこんな事を言っているんだろう… それは分かってる… 分かってるけど… 上手く感情をコントロールできない。 「ごめんね、…なんだか、悉くタイミングを逃して…」 「悪い…俺も、少し動揺して…」 これは、罰だ。 人を試して傷付けながら生きてきた、俺への罰… いつかどこかでツケが来る… その言葉は本当だったらしい。 この世の中は、帳尻が合うようにできている。 なにも、今じゃなくたって… 紘二の事じゃなくたって… 「稑くん…」 「…」 聞きたくない。 嫌だ。 もう20代も後半の年齢にも関わらず、こんな子ども染みた考えしか持てない自分が嫌になる。 「僕はね、できる事なら稑くんを連れて行きたいって考えていたんだ。」 その言葉に、少し期待を持った。 もう、捨てられたくない…

ともだちにシェアしよう!