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第41話
伝わってくる心音が早い。
そのペースに合わせて、俺の心音も早くなった。
「………海外出向がね、決まったんだ。」
「え…」
「日本の会社に籍を残したまま行くから、いずれはまたこっちに帰って来られると思う。いつになるかは、分からないけど…」
「海外って…それ、いつ決まった話だ…」
「1ヶ月前…」
「なんで!なんでそんな大事な話…」
自分がしてきた事を棚に上げて、一体どの口がこんな事を言っているんだろう…
それは分かってる…
分かってるけど…
上手く感情をコントロールできない。
「ごめんね、…なんだか、悉くタイミングを逃して…」
「悪い…俺も、少し動揺して…」
これは、罰だ。
人を試して傷付けながら生きてきた、俺への罰…
いつかどこかでツケが来る…
その言葉は本当だったらしい。
この世の中は、帳尻が合うようにできている。
なにも、今じゃなくたって…
紘二の事じゃなくたって…
「稑くん…」
「…」
聞きたくない。
嫌だ。
もう20代も後半の年齢にも関わらず、こんな子ども染みた考えしか持てない自分が嫌になる。
「僕はね、できる事なら稑くんを連れて行きたいって考えていたんだ。」
その言葉に、少し期待を持った。
もう、捨てられたくない…
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