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第42話
紘二が望むなら、俺はどこへだって行くし、なんだってする。
俺にとって、紘二はとても大切な存在だった事に気付いたから…
愛だろうが、恋だろうが、情だろうが…
そんな、ずっと気になっていた事が、今となってはどうだって構わない。
「紘二。俺も、連れて行ってくれるんだよな?…」
「………ごめんね…」
「え?…」
紘二が謝った意味が分からない。
思わず見上げると紘二は目を閉じて首を横に振った。
「僕は、稑くんを連れては行けない。…ごめんね…」
「嫌だ…」
「ふふ、我が儘な稑くん、可愛い…」
そう言って笑った紘二の息が俺の髪を揺らした。
「なんだよそれ!こんな時にふざけるなよ!!」
「ふざけてないよ。…嬉しいんだよ、ただただ、嬉しいんだよ…」
「嬉しい?…」
「そうだよ。稑くんが我が儘を言ってくれるの、僕はとても嬉しいんだよ。」
「ッ…我が儘なら、我が儘ならいくらでも言ってやる!…だから…置いてくなよ、紘二…」
ギュッと紘二の服を握った。
「離れてみてね、気付いたんだ。僕は、稑くんに依存しすぎてるって。」
「そんなの紘二だけじゃない。俺だって、依存してる…」
「うん。だからね、このままじゃダメだって、依存からはなにも生まれないってね、僕は思ったんだ。凄く一方的で身勝手だって分かってるけど、一度リセットして…」
「嫌だ!嫌だ、嫌だ!!」
そう喚き散らす俺は、まるで子どもみたいだ。
頬が冷たい…
多分…
俺は今…
泣いているんだ…
「稑くん、…僕が見たかったのはね、今みたいな稑くんの素直な表情なんだよ。…嬉しい…本当に、とても。」
そう言うと、紘二はあやすみたいに俺の髪を撫でた。
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