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第43話

優しくしないでほしい。 捨てられるなら… どうせ捨てられるなら、突き放された方がマシだ。 それなら諦めもつくかもしれない。 このまま喚き散らせば、別れ話なんて撤回されるかもしれないと期待してしまう。 期待を持たせるような事は… しないでほしい。 「優しく…するなよ…」 「うん…ごめんね。でも、僕は稑くんを突き放すなんてできないから…」 「つ、突き放すじゃないか!捨てるんだろ!」 「そうだね…稑くんの言う通り、結果的には…そういう事になってしまうよね。」 「なら…期待させるような事…止めろよ…」 涙が止まらない。 もしかしたら、今日俺は一生分泣くのかもしれない。 あの人と別れた時も泣かなかった。 涙なんて、弱みを握られるだけだ。 だから、泣いたりなんて… しなかったのに… 「泣かせてごめん…。突き放せなくてごめん…。期待させるような事して…ごめんね、稑くん…。でもね、僕の出した答えは、…揺るがなさそうだよ。」 「もう、絶対に揺るがないのか?…」 「うん、もう、決めた事だから。」 紘二の顔は涙でブレて、よく見えなかった。 ただ、分かったのは… その声に一ミリの迷いも感じない事だけだ。 「わ…ッ…わか…、…分かっ…た…ッ…」 本当は分かりたくもない。 受け入れたくもない。 でも、俺はいつも紘二を困らせてきた。 だから、最後くらいは困らせないようにしたい。 例え、それが本心とは違っていたとしても… 俺はちゃんと… 言えただろうか…

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