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第45話

稑くんの話を先に聞いてあげればよかったと少し後悔している。 この後では、きっと稑くんは話しにくいだろうから… でも僕は、なんとなくだけど稑くんが話そうとしている内容が分かる。 多分、病気の事… 稑くんが自分から話してくれるのを待っていたけれど、結局僕に話してくれる事はなかった。 いくら僕が鈍感でも、風邪を拗らせてた事くらいは気づいていた。 だから、いい加減病院に行くように促した。 稑くんは渋々病院に行って、その日以来ずっと薬を飲んでいる。 稑くんは上手く隠せてるつもりだろうけれど、詰めが甘い。 薬のシートをキッチンに出したままだったり、ゴミ箱に普通に捨ててあったり… どうせ隠すなら、もう少し上手く隠してほしかった。 最初は隠す事なく、市販の風邪薬を飲んでいた。 病院に行ってからは処方薬を飲み始めて、少し長いなぁ…と思い始めた辺りからコソコソ飲むようになった。 稑くんの様子に違和感を感じるようになったのもその辺りから… 流石に僕も心配になって、ゴミ箱のシートを拾ってその薬について検索した。 そして、稑くんが飲んでる聞いた事もないような名前の薬がどういうものなのかを知った。 そして、そんな大事な事も話してもらえない程度の存在なのかもしれない…と自信を失った。 もしかしたら、いつか話してもらえるかもしれない… そう思って待っていたけれど、話してはくれなかった。 「紘二…」 「ん?…」 「もう、紘二には関係ない話だろうし、今更聞かされても、…困るだろうけど…紘二に話したい事がある…」 「うん…」 あぁ、どうしよう… なんか泣きそうだ… その話は、付き合っていた時に聞きたかった。 やっぱり僕は順番を間違えた。 そうすれば、まだ辛うじて付き合っていたの事になるのに… 自分の考えのなさと、幼稚さに少し腹が立った。

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