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第46話

その後、稑くんがゆっくり静かな口調で話し始めた。 今まで溜め込んでいたものを解放するかのように、一生懸命に話してくれた。 どれもこれも初めて聞いた事ばかりだった。 稑くんの生い立ちから、前に働いてたお店の話、僕の前に付き合っていた人の話、そして、病気話… 僕は稑くんに対する接し方を間違えていたのかもしれない。 なんで聞き分けのいい男になってしまったんだろう。 ちゃんとこうして向き合っていればよかったのに… 稑くんが、自分に蓋をするタイプだって事は、分かっていた筈なのに… なんで僕は… 「紘二…ごめん…俺…」 「稑くんは悪くないよ。僕が悪い。頭の中で分かってた筈なのに、向き合わなかった僕が悪い…」 「紘二は悪くないっ!俺が…」 「それなら、僕も稑くんも両方悪い。お互い様なんだよ、きっと…」 「紘二…やっぱり俺…」 「稑くん。」 「言わせても、くれないんだな…」 稑くんの唇は、別れたくない… 間違いなくそう言おうとしていた。 そんな言葉を聞いたら、揺らいでしまう。 手放したくなくなってしまう。 「ごめんね…」 「なら…」 「え?…」 「それなら最後に…最後でいい…最後で…いいから…抱いてくれ…」 稑くんが口にした言葉は本当に意外なものだった。 今まで稑くんから求めてきた事なんて一度もなかった。 ズルい… 「ごめん。ごめんね、稑くん…それは、…できないよ…」 「そう、か…」 稑くんの表情が変わった。 酷く傷ついたような、そんな表情だった。 僕は堪らなくなって俯いた。 「ごめんね、稑くん…」 「キスも…駄目か?…」 本当は抱きたいし、キスだってしたい。 でも… 「…うん、ごめんね、稑くん…」 「ッ…」 ひたひたと稑くんが近づいてくる音がした。 俯いた視線の先に稑くんの足先が見えた。

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