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第47話
稑くんの足先は冷たい。
多分、今も冷たいんだと思う。
スリッパは必ず履くようにいつも言ってたのに…
二人で寝る時、稑くんの冷たい足先が触れてヒヤッとするのが好きだった。
足先が触れ合って徐々に温かくなっていくのを感じるのも、セックスの後にポカポカになった足先を感じるのも好きだった。
もう、それを感じる事もないのかと思うと切なくなった。
稑くんの手が僕のシャツを遠慮がちに握った。
そして、胸元にコツンと稑くんの額が当たった。
「稑くん?…」
「今夜は…紘二の隣で寝たい…」
「…」
「なにも、…なにもしなくていい…ただ、隣に居るだけでいいから…」
「…」
「それくらいの我が儘は…聞いてくれ…」
「ん、…分かった…」
ゆっくりと稑くんが僕から離れた。
その後、稑くんはお風呂に入り、僕は荷造りをした。
流石に稑くんの居る前でするのは気が引ける。
だからお風呂に入っている間に…
稑もそれを察してかとても長風呂だった。
荷物をまとめてる時、何度もチョコがトランクに入って邪魔をした。
行くなと言ってるのか、ただ単に習性なのか…
「チョコ、稑くんを…頼むね…」
荷物いっぱいのトランクを閉めて、チョコを抱き上げると僕はそう伝えた。
荷物を玄関に置いて、暫くすると稑くんが出てきた。
それと入れ替わるように僕もお風呂に入った。
もう、このお風呂に入るのも、この部屋に居るのも、今日でおしまいだ。
僕は明日、この部屋を出る…
稑くんと二人で探して、二人で選んだ思い出が沢山詰まったこの部屋を…
そして、日本からも…
僕は出発を遅らせてもらっていた。
まだ稑くんに話せていなかったから…
まさか今日話す事になるとは思っていなかったけれど…
黙って居なくなるような無責任な事はしたくなかった。
後輩を先に行かせている以上、できるだけ早く…
だから明日発つ。
それに、稑くんと別れた僕には、もう日本に留まる理由はない。
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