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第52話

少し童顔で、身長の低い可愛い印象… おまけに素直ないい子で、俺とは全く逆の人間だ。 俺も今となっては少しだけ素直になって、大分生きやすくなった。 以前までの俺なら、誰にも頼らずに全て一人でしていたと思う。 でも今は、強がらずに頼る事ができる。 ずっと一人で生きてきたと思っていた。 しかし、それは違った。 見守られたり、サポートされていたからこそ、ここまで生きてこられた。 その大切な事に気付く余裕がなかった。 今だったら、紘二に優しくできたのに… こうして、考えても仕方ない事を考える事がある。 どんなに考えたところで、やり直せるわけじゃない。 こんな日は、決して大柄でもないのに抱きしめられるとなぜか、広くて大きく感じる紘二の胸の中であやされたくなる。 本当はこんな事を考えながら仕事をしてはいけないんだろうが、結局紘二を思いながら仕事をしてしまった。 当然、仕事が終わってからはいつもの倍疲れた。 「前川さん、なんか今日疲れてます?」 「え、そう見えるか?」 「はい。」 「小林君は鋭いな。」 「そうですか?」 「あぁ。ごめん、もっとしっかりしないとだな。」 俺は不甲斐ないオーナーだ。 情緒不安定を見破られて、こうして心配をかけている。 「あー、いえいえ。えーと…そういうつもりで言ったわけじゃ…」 「はは、分かってる。ありがとうな、小林君。」 アルバイトを帰した後、二人で掃除をしながらこうして色々な話をするのが楽しい。 若い子の話はとても刺激になる。 「あの、前川さん。僕、もっと前川さんに頼ってもらえるように頑張ります!」 「小林君はもう十分頼もしいぞ。」 「いえ、まだまだです。…なーんて、生意気ですね。」 「全くだ。」 「え"っ…」 「嘘だ、嘘。小林君は十分頼れる存在だ。これでも一応は、感謝してる。」 「一応…」 「ところで、来月の新作なんだが、小林君に任せようと思ってる。プレゼントとかお土産で貰って嬉しい感じのショコラをいくつか。カフェだけじゃなくて、店舗販売の品にも力を入れていきたいと思ってな。」 「ほ、本当ですか!?」 「あぁ。それにあたって、近日中にレシピ案をもらえるか?」 「は、はい!!頑張ります!!」 若い芽は育てないといけないと思う。 自分一人でやるのは簡単で楽だ。 自己完結できる。 でも、俺はあえて難しい方を選べるようになった。

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