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第61話
バレンタインの夜のあまりに夢のような再会…
酷く疲れていたのもあって、本当に夢なのかもしれないと不安になった。
「紘二…」
「うん?…」
「これは、夢じゃないよな?」
「夢だったら僕はショックだよ。」
紘二が苦笑した。
「俺だって。…でも、あまりにできすぎてる…」
「不安?…」
「あぁ…」
「稑くんは相変わらず臆病だね。そこが可愛くて魅力的でもあるんだけどね。」
「なんだよ、それ。」
「不安なのは、僕も同じだよ。稑くんが言う通り、こんなに上手くいくわけない。昨日帰国したばかりで、昨日の今日で再会できるなんて…」
「昨日?…昨日帰ってきたのか?」
「うん。…稑くんの事に関しては、長期戦を覚悟してたんだ。」
「長期戦って…」
「稑くんが待っててくれてる保証なんてなかったけど、それでも僕は稑くんを探したかったんだよ。」
「分かる。…俺だって紘二が帰ってくる保証もなければ、帰って来たところでよりを戻せる保証もなかったけど、待ってたかった。だから待ってた。」
「うん…嬉しい。」
「紘二…今、どこに住んでるんだ?」
「物件見つかるまではホテルに泊まるつもりだよ。」
「そうか…」
「ねぇ稑くん、チョコは元気?」
「あぁ、最近は眠ってばかりだけどな、歳相応には元気だ。」
「そう…」
寄って行くか?…
その一言が出ない。
紘二も紘二で何か言いたそうだけど黙ったままだった。
「あの、さ…チョコちゃんに会ってやってくれないか?」
「いいの?」
「あぁ。きっと喜ぶ。」
結局チョコちゃんに頼ってしまった。
もし紘二が帰国するなら、その時はまた一緒にあの家で暮らしたい…
家賃が厳しいのに無理して住み続けていたのはそんな理由だ。
「じゃぁ…甘えようかな。」
繋いだ手に力がこもったのを感じた。
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