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第71話
荒い息を弾ませて稑くんが崩れ落ちて、僕もその上に覆い被さるように崩れた。
稑くんの髪が汗で濡れて、それが髪に染み込んで甘い香りを引き立たせた。
稑くんの心音を聞きながら呼吸が落ち着くのを待った。
「稑くん、好き…」
「…分かってる。」
「本当に?…」
「ん…」
「好き…稑くんは?…」
鼻先で稑くんの頬を擽りながら何度も何度も囁いた。
「…………好き…」
「ふふ、嬉しい…」
「重い…」
「え"っ!!」
「馬っ鹿、そっちじゃなくて…体重…」
「あ、あぁ、ごめんね。稑くんとこうやってくっついてるの、気持ちよくて…」
「…あ、待って。」
離れる為に抜こうとした瞬間稑くんが言った。
「え?」
「やっぱり、もう少し…」
「ふふ…うん…」
稑くんの手の甲に掌を重ねて、指の腹でくすぐったりして遊んだ。
「紘二…」
「うん?」
「その…一回で、いいのか?…」
「あぁー…残念ながら、色々な面を考慮するとこれが限界かなぁ…」
「はは、よかった…」
「なにがよかったの?」
「もう一回とか言われたらどうしようか内心ヒヤヒヤしてた。」
「ふふ、僕が性欲高くなくてよかったね。」
「まぁ、それは紘二にも言える事だけどな。」
「ん?僕?」
「だって俺が性欲高かったらもっともっとって言ってたかもしれないぞ?」
「んー…そうしたら少しは頑張れるかなぁ…」
唇で肌を擽りながらする話はなんだか凄く新鮮だった。
「はは、なんだそれ。」
「そろそろ抜こうね?…稑くんお腹痛くなっちゃうから。」
「なんかまだ信じられないな…」
「うん?」
「…再会できた事だってまだ夢みたいなのにさ…こうやって抱かれて、紘二が俺のナカに居て…俺の奥に紘二のが溜まってると思うと…なんかな…」
「僕だって同じだよ…大好き…稑くん。もう、手放したりしないから…側に居て?」
「また手放されるのは困る。…8つも年取ったんだ…次はきっと潰れる…堪えられない…」
「うん…もう、しない。」
稑くんの言葉は冗談とかじゃなくて、本心だと思う。
きっと、何度も挫けそうになりながら待っていてくれたんだと思う。
だからもう、僕から稑くんを放したりなんて絶対しない。
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