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「…ん……今…何時…」 あれからだいぶ寝たのか体が少し楽になっていた 携帯を探し出し時計を確認すると時刻はもう21時前を示しるのを見て驚き飛び起きた バタバタと階段を駆け下りるとリビングの光がついていて、ソファに腰掛けている陽がテレビを見ていた 「……兄貴おはよう」 「陽、ごめん……」 「なんで?」 「俺夕飯作るっていったのに」 「………兄貴……ここ座って?」 あんまり顔に気持ちが現れない陽だけど、ほんの少しだけ怒りを含んだ目をしていた 「兄貴」 「なに?」 「はい」 そう言って陽は腕を広げてこちらを見つめる てっきり説教でもされると思ったのに…… 俺はいきなりハグをするかのように腕を広げてくる陽にパチクリと目を丸くしてしまった 「……兄貴も」 「え?あ、うん」 陽の真似をして俺が腕を広げると、陽が胸に飛び込んできた 「ぎゅー」 「えっ! よ、陽?!」 「兄貴も俺の事ぎゅーして」 「……こ、こう?」 言われるがままにたどたどしくも、成長して大きくなっていく陽の体を抱きしめた 「……あったかい」 「うん、あったかいね」 「……ギューするとストレスが減るんだって」 「え?」 「……兄貴疲れてる最近……。 俺何もできないから、変わりに今日はギューする」 そう言いながら俺の胸にすりすりと頬をくっつけ気持ちよさそうにする陽はまるで猫みたいで笑みがこぼれる 本当、陽から伝わる体温は暖かくて 心臓が優しい色に包まれる 「う〜〜陽大好きだよ〜〜」 「俺も兄貴大好き」 「うふふ嬉しい」 「……兄貴少し元気でた?」 「少し所じゃないよ凄い元気になったよ」 「良かった……兄貴が元気だと俺も嬉しいよ」 可愛くて堪らない陽の天使っぷりに物凄く癒された うじうじ考えても仕方ないんだからやれる事やって行かなきゃと腹をくくり明日直輝の一応通っている高校に行こうと腹をくくる ここで悩んでても仕方ないんだ どうなるにしろぶつからなきゃならない 「よしっ! あの変態男殴らなきゃ気が済まないからな!」 そう自分に喝をいれると 気遣ってくれた大切な弟とゆっくり時間を過ごした ◇◇◇◇◇◇ 次の日の朝は陽にお礼で朝ご飯とお弁当を作ってもたせてから俺も電車で直輝の学校に向かおうとした為制服で学校に行った 昨日休んだ分と最近の遅れを取り返すのに必死でノートを移させてもらってたら気づくともう学校はホームルームを迎えていて、 直輝の学校まではひと駅隣で何度も何度も遊びに行ったから時間もわかる ホームルームの時間までには辿り着くようにって計算したら思いの外時間がなくて駅まで猛ダッシュで向かった 六月の夏の日差しが照りつけるなか走ったおかげでワイシャツに汗がにじむ こんな状態で電車に乗り込むのがなんだか申し訳なかったけど、どうしようもなくて目当ての電車に乗るとやっぱりチラチラと見られて窮屈だった でもそのおかげで珍しく誰からも触られることなく済んで駅についてからは時計を確認して再び走る なんであんな糞勝手なドS変態の為に俺はこんなに必死になってんだよって苦しい息の中思うけど…… そんなのはやっぱりシンプルにアイツが大切なんだ 俺嘘ついて好きじゃないなんて言っちゃったことちゃんと謝れてない それに好きでいてくれた事お礼もしてない なのにこのままサヨナラなんてあんまりだろ 頭の中で天邪鬼な自分の考えに喝を入れる 直輝の学校についた時にはそりゃもう全身汗だくでワイシャツが張り付いて気持ち悪い それにきっと周りからしたら汗かいた男が校門ウロウロしてるなんて嫌だろうし……どうしよ… 流石に直輝だってこんな不潔な姿見せたら百年の恋も覚めるかな…… なんてまた色んなことが頭の中を駆け巡る 校舎の中には入れないから大人しく校門の前で息を整えながら直輝が居ないか下校してきた生徒の中を探した 汗びっしょりかいてハァハァしながら生徒を見てる俺がやっぱり気持ち悪かったんだろう…… 下校する生徒皆が俺を見てはヒソヒソと話している 「…気まずい…直輝どこだよ…」 余りにも視線が突き刺さるため何だか本当にこんな姿であっていいのかと不安になっていたとき女の子に話しかけられた 「お兄さん、どうしたんですか?」 「え……俺?」 「うん! お兄さん!」 「あ……天使直輝っているかな?」 「直輝くんの知り合い?!」 「…あ、うん幼馴染みで」 「わ〜!直輝くんはお友達もイケメンなんですね!」 「いやそんな……1人こんな汗かいてるし……それより直輝今日は学校来てない?」 俺が女の子に聞き返したとき 校舎の奥がいきなりざわめき出す 「あ、噂をすれば」 「え?」 「あの集団の中居ますよ」 「えっあの集団…?!」 言われた先には何の祭りかと思うほどに人が大勢集まっている 「久しぶりの登校らしくて人気ですね」 「……そうなんだ、ありがとう!俺ちょっと行くね!」 女の子にお礼をするとその集団に走りよった 物凄い数の女の子だ……いや、男の子もいるし…あいつ本当に人気なんだ… 人の波をどうやって掛け分けようか悩んでいたら、動き出した人の波に押し込まれた。 その後直ぐに誰かに背中を突き飛ばされたいきおいで俺は直輝を取り囲んでいる円の中心にポーンと転んでしまった 「〜〜〜っ!いったぁ……人……怖い……」 集団の人間の恐怖にガタガタと震えながら頭を起こすとさっきまでキャーキャー騒いでいた人達がピタッとだまり俺を見下ろす えっなになにこわい…… 野生動物に飼われていたペットが1人放り込まれた気分だ そう、体を縮めようとしたとき 後ろから名前を呼ばれた 「祥ちゃん?」 「えっ」 反射で振り返ると俺が突き飛ばされて吹っ飛んだ場所は直輝の足元だったらしく物凄く恥ずかしい所を見られてしまった 会ったらぶん殴ってやろうと思ってたのにそれどころか足元にへなへなと座り込んで格好つかない 「………えっと、直輝」 「何でいるんだよ?」 直輝はパチパチと目を瞬かせて俺を見下ろす 俺は直輝の顔を見上げて落ち着いてくるととぼけている直輝へ怒りが湧きあがってきた 「…っ!お前!」 「!」 直輝は反射的に俺に殴られると思ったのかギュッと目を瞑り痛みに備えて力む。 しかしそんな痛みはいくら待ったって直輝に降りかかることはない 「えっ」 直輝が心底驚いたような声をあげた そりゃそうだ、殴られるの覚悟して目を閉じたのに俺は今直輝を殴らずに俺よりも大きくて鍛えられてる直輝の体に抱きついているんだし 言いたいことも山ほどあるけど でも今はこうする事で全部、全部伝わるって思ったんだ 「……」 「……」 「…………」 「何か言うことないのかよ」 「なんでいんだよ?」 「ッそうじゃないだろ……!」 「いやそれしか……」 「……なんで俺の話聞かないままどっかいこうとすんの」 「……」 「俺引っ越すとか聞いてない」 「………」 「直輝言ったじゃんか。 俺の悲しい事は全部やっつけてくれるって」 「……そんなの、昔の話だろ」 「……男の癖に約束破るのか?」 「…………だから俺はもうしょーちゃんとは」 「そんなの! そうやって……勝手に関係終わらすなんて俺は許さない!」 「え?」 「散々人の事弄んでおいて気まづくなったらさよならとかそんなの俺が許すかよ!」 「……じゃあ、どうしたら」 「時間ほしい」 「どういうこと?」 「……だから! 時間くれっていってんの」 「………いや、だから何でだよ」 「はあ? 俺だって色々考えたいから……今迄幼馴染みとしか見てこなかったけど告白の返事考えさせてって言ってんだよレイプ野郎」 「それって……」 「……そもそもお前らしくないんだよ」 「俺らしくない?」 「……直輝はいつだって自信満々で余裕そうに見下して俺の事からかって……」 「はっ、酷い言われようだな」 「………でもいつも俺の傍いてくれた」 「……」 「俺の事好きなんだろ?」 「……」 「俺の事好きなんだろッ?」 「ああ、好きだよ」 「だったら俺の事惚れさせてみせろよ……! ちゃんと責任とってみせろよ。 友達以上になれるくらいお前に惚れさせてみろ変態」 「………」 「……なっ、なんか言えよぉ」 「…………」 「…………〜〜〜ッ」 「………」 「っおい!……えっ!ちょっ……! んぅーっ!」 いつまでも黙り込む直輝に、恥ずかしくてたまらない俺は抱きついたまま俯いていた顔をあげた その時直輝の唇が俺の唇に重なる キャーッと取り囲んでいた子達が騒ぎ出す声が聞こえてくるけどそれどころじゃない 顎を掴まれ腰をいきなり引かれて直輝に寄りかかるように力強く抱きしめられて人の前なのにキスをされて頭が混乱する 「ん〜〜〜〜っ!!!」 バンバンバンと直輝の背中を叩くとやっと唇が離れていった 恥ずかしくて睨みつけようとしたら俺が知っている大好きないつもの余裕そうな笑みを浮かべていてドキッとする 「覚悟しとけよ?」 そう言って直輝は悪戯に笑うと、俺の唇にもう一度キスをしてきた

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