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亀裂

朝直輝の家を出るとき心配になり昨夜約束した事をもう一度直輝に覚えてるか尋ねると、ちゃんと聞きていたらしくしっかりと覚えていてくれていた 挙句に、玄関前で 「そっか〜そんなに俺とのデート楽しみなんだ」 なんて勘違いもいいことをニヤニヤと意地悪に笑いながらキスをしてくるから、思わず恥ずかしくて殴って飛び出すようにして学校に向かった (ちょっと強く殴っちゃったかも…怪我してないかな…) 怪我してないか不安に思いながらも、なんだか放課後までずっとそわそわして落ち着かない やっと放課後になったと思ったら直ぐに教室飛び出して駅までまっすぐ向かっちゃってるし、案の定痴漢されてもなんだか今日は機嫌がいいから軽く懲らしめて電車を降りた (………なっ、なんか俺楽しみにしてるみたいでムカつく…) 直輝の学校に着くまでのあいだそわそわとして心が落ち着かない 1ヶ月ぶりに直輝の制服姿を見るんだし、 そもそもあの場所で1回ヤっちゃったんだよな…うわわ…恥ずかしい… 一人で歩きながらきっと不審なほどに顔を赤らめて馬鹿みたいだと思うけど、 こうゆう時間が新鮮だった いつもいつも家で会ったらそのままヤっちゃって朝起きてもヤっちゃって家帰ってもヤっちゃってお風呂でも… なんでこんな乱れた性生活送ってるんだよ…全部全部直輝のせいだ… でもそれが嫌じゃない俺も変態なのかもしれない… それに俺、なんで直輝の事1日ずっと考えちゃうんだろ… そんなことを考えながら歩いていたらもう目前に直輝の校舎が見えてきた。 あの曲がり角曲がれば校門まで直ぐだ! そう思って足を早めたとき校舎を囲っている鉄格子の内側に見慣れた白髪の頭が見えた (あっ直輝だ…ふふっ髪の毛目立つなぁ) まだ気づいていない直輝に駆け寄り柵越しに声をかけようとしたとき思わずその言葉を飲み込んだ 俺と直輝が塀を挟んで向かい会う真ん中に女の子が立っている 直輝と何やら楽しそうに話していて、 直輝も王子モードとかじゃなくて心から笑ってるのを見て何だかモヤモヤする 話しかけようか悩んで数メートルの距離で立ち止まった時、直輝の手が女の子の髪を撫でて頬に手を添えた 「……………えっ…」 自然と驚く声が漏れたとき、直輝の顔が女の子へと近づけられた。 まるで、キスするみたいにその綺麗な瞼を閉じて。 それ以上見てられなくなった俺は直輝達から背を向けて走り出していた ズキンっ ズキンっ 走ってるから?息が苦しいから? だからこんなにも胸が痛いんだろうか 走っても走っても進んでない気さえする 来た道を戻り曲がり角を曲がろうとした時、誰かに勢い良く腕を引っ張られて上手くバランスの取れなかった俺は後ろにいる誰かの胸に倒れ込んだ 「お前っ…、はぁ…足はやすぎ」 「なお…き…」 その声は今一番聞きたくない人の声で 俺の手を掴んで背中から伝わる体温が今朝はあんなに心地よかったのに今は嫌でたまらない (その手でさっき他の女の子触ってたばっかだろ…) 「……離れろ」 「え?」 「触るなっていってんの」 「祥?怒ってんの?」 「………直輝さ…ずっと聞きたかった事あるんだよね」 「……なに」 「……直輝ってもしかしてまだ…俺の事玩具って思ってるの?」 「はあ?」 「……俺ってセフレ?好きって体が好きってこと?」 「……何言ってんの、お前」 「…………セフレなら今迄通り他の女の子でよかったじゃん…なんで……なんでお前のその性欲に俺まで巻き込むんだよ」 「……祥、それ本気で言ってんの?」 さっき迄とは違う、眉間にしわを寄せて明らかに怒っている表情の直輝に睨まれて自分の言ってることが酷いことに気づく もっと落ち着いて話したいのに口から溢れるのはお互いの関係を、俺の事を、直輝の事を、否定して貶す言葉ばかりだ 「………ッ」 「…まじで俺に今も玩具にされてると思ってたわけ?」 「……だったらなんで………ッ…」 「…お前は俺に玩具だと思われてこの1ヶ月抱かれてたのかよ」 「……ッお前だって…!俺の事あの日から一度も好きって言わなかっただろ!」 「ッ?!それは……その…」 一番心に引っかかっていた事を口にしたとき、俺の目から視線を逸らして宙を仰いで何かを隠す直輝を見た瞬間心がドロつくのがわかった 「……もうっ…触んな…俺は……玩具にはなりたくない…セフレにも…お前のただの暇潰しになってんなら…もうお前とは会わない…!」 「はっ?!ちょ、祥!」 直輝が俺を呼ぶ声を無視して再び走った でもこれ以上向かい合って話してたら言わなくていい事まで言いそうだ 何よりあれ以上言い訳もしてくれない直輝を見て、その無言が肯定の意味で、俺は本当に直輝のセフレだったってもうこれ以上知りたくなかった 目の奥が熱い 喉がキュッてしまってうまく息ができない 頭に空気が回らなくて視界が歪む (なんで好きって言ってくんないんだよ…) 俺はそのまま駅まで止まることなく走った。 駅について必死に空気を求めながら後ろを向く。 でも直輝が追いかけて来ることはなかった 「………っは…俺、本当に玩具の延長線上にいたわけ………」 自分から直輝の傍を離れて駆け出したくせに、後を追ってこない直輝に怒りが湧いた …………いや違う、これは怒りじゃない 悲しいんだ……本当は違うってどこか期待してたんだ…追いかけてきて違うって言ってくれるって… でも現実はこれだ、 直輝は後を追っても来ないし言い訳もしない。自惚れてた自分が悪かったんだ。 あの日の直輝の目が本気に見えたから それを信じて今日まで俺もダラダラ直輝の好意に甘えてたから罰が当たったんだ 答えも出さずに、でも直輝と離れたくないって だけど直輝と友達以上になる覚悟を持てないまま直輝の傍にいたバチが当たったんだ 「……だっさ………なんで俺…傷ついてんの…」

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