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祥に振り払われた手が痛む
そんなに強く振り払われた訳でもないのに
あいつの手を握っていた手がジリジリ焦がすように痛みを増していく
祥がさっき迄そこに居た場所に視線を落とす
少し、意地悪してやるつもりだった
祥が朝からワクワクして俺の事迎えいくって言ってたから、きっちりしてる祥の事だしこの時間には来るだろうなって待ち伏せしていた
どんな反応すっかなーてぼんやり待ってたら学校でそれなりに仲良くしてる女の子が俺のところに来て他愛ない話をしてくる。
俺も暇だったし祥が来るまでいい暇つぶし出来ると思って俺も話に答えた
暫くすると角から祥が走って来るのが見えてその顔が余りに必死だったから、いつもの調子でからかってやろうって思った
…………からかうってより仕返ししてやろうって
昨日、祥が帰って来るのが遅いから祥の美容院まで実は迎えに行っていた
もう閉店している店のドアから中を覗いた時に、俺よりも歳上で大人の余裕がある男に肩組まれて楽しそうに笑ってる祥を見てイライラした
(俺の前でだけ笑えばいいのに……
他の誰にもそういう隙見せてんなよ、だからいろんな奴に襲われんだろ)
俺にも気づかないで楽しそうに話してる祥をこれ以上見てらんなくて一人で家に帰った
部屋に着いてベットに潜り込んで無理矢理に意識を切り離そうとして寝ようと思ったけど、シーツから男の癖に女みたいないい匂いの祥の匂いがシーツに染み込んでて嫌でもさっき迄の情景が脳裏に浮かぶ
(ったく、あいつ本当にムカつくわ)
離れてても何してても頭ん中祥ばっかり浮かんできてイライラする
(どんだけあいつは俺の事待たせんだよクソ…)
イライラを押し込めてベットから起き上がりリビングに向かった
祥が終わるまでぼんやりテレビを見ていようと思い、つけたがどれも頭に入ってこなくてソファに寝そべって明日の仕事の流れを確認していると携帯がなる
鳴って直ぐに、祥だと思って通話ボタンを押すと案の定耳に聞こえるのは待ち望んだ柔らかい声と笑い声がきこえた
がっついてるみたいで俺すげー格好悪いなって思ったけどそんなの吹き飛ぶくらい祥の声が愛しくて堪らない
まだ飯食ってないことを伝えると、直ぐに帰るねって言ってくれる祥に自然と顔がニヤつく
さっき迄不機嫌だったのに電話一つで直ぐに喜ぶなんて俺も末期だなぁて思いながら電話を切って玄関の前で待つ
壁に寄りかかって、何作ってもらおうか考えてるとエントランスのベルが鳴った
直ぐに鍵をあけてやると、少しして家のインターホンが鳴る
やっと祥に会えると思って顔がニヤけるけど、散々待たされたぶん少し意地悪してやろうと思って不機嫌な顔を作ってドアを開ける。
すると、玄関の前に立っている祥は俺とは反対に陽向みたいなあったかい笑顔浮かべていて
思わず、「お帰り」ってぶっきらぼうに言ったらクスクス笑いながら「ただいま」って返してくれる祥に今すぐ触れたくて堪らない
玄関に入ってきて祥が俺の横を通り過ぎた時、嗅ぎなれない香水の匂いがした
いつも何もつけないのに花みたいな匂い漂わせてる祥から男物の香水の匂いがしてすっかり忘れてたさっきの映像が脳裏に浮かぶ
その途端頭で考えるよりも先に手が祥を掴むとその匂いをかき消すように祥にキスをした
走ってきてくれたのか少し祥の肌が湿っている
すぐ帰るためにもし走ってきたんだとしたらすげー嬉しいなって思ったらムラムラして堪らない
俺の喜びはすぐ下半身に繋がんのかよ…俺も変態って言われても否定出来ねーなこれじゃ、なんて自分のアホさに呆れた
だけど俺のキスに必死に応えようとしてる祥の快楽に歪む顔が簡単に俺の理性を奪っていく
結局そのあと祥の事馬鹿みたいに抱いて、布団に潜り込んだ時は祥はクタクタになっていた
(………いじめ過ぎたわ)
少し赤くなっている祥の目の淵を見つめていたらふいっと祥が俺に背を向けて壁側を向く
流石に怒らせたか、と思って謝ろうとした時先に祥が口を開いた
何かと思えば明日の放課後暇かって内容で初めて祥から誘われた事に驚く。
ただそれだけで、嬉しくて堪らない。
それってデートかっておちょくってやったら、顔真っ赤にしてギャーギャー言ってる祥が愛しくて堪らない
触ったら本当に怒らせるかもな〜て思ってはいても簡単に折れてしまいそうなその細い腰を抱き寄せた
祥が動く度に艶のあるサラサラな髪からいつもの祥の匂いが鼻をかすめて心が暖かくなる
祥が今は俺を好きにならなくても、
いつか祥も俺と同じ気持ちになってくれたらいいのに…俺のこの気持ちが全部体温通して伝わればいいのに何て事が頭の中に浮かぶ
でもそう思いながらも好きにならなくてもいいと思った
俺の気持ち知っても気持ち悪がらないで、向き合おうとしてくれた祥が少しの間でも俺の傍で笑っててくれんなら実らなくても構わないと思った
ただ一瞬でも俺といて少しでも幸せな気持ちになっくれたんなら、それだけで俺にとっては死ぬほど幸せな事だ
そう思いながらまた元気になる息子に苦笑しながらもクタクタの祥を漬け込んで一晩中抱いて寝た
案の定途中で祥は気絶して、翌朝の祥にはボロボロになるまで締め上げられた。
プンスカ怒って俺の目を見ようとしなかったくせに後ろから抱きしめてほっぺにキスしてやると顔真っ赤ににして睨みあげてくる祥に朝から襲いたくて堪らなかったけど
今日は久しぶりに放課後会う約束してるし、その時散々鳴かせてやろうと思って楽しみに待っていたらこんなザマだ
「………はぁ〜…俺…本当何してんだよクソ」
祥だけが居なくなった場所に座り込んでガシガシと頭を掻きむしった
俺と同じようにヤキモチ妬かせたかっただけだったのに、泣きそうな顔させた自分の餓鬼さに腹が立つ
それよりもずっと俺といた時セフレだと思われてた事に物凄く胸が痛んだ
自分で祥に言って傷つけた言葉で俺が傷ついてるなんて本当に自業自得だ
「祥の事…玩具なんて思った事も一度もねえよ」
そんな俺の言葉は心の中とは清々しいほど真逆で青い空に吸い込まれていった
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