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「瑞生さんおはようございます」 「うん、おはよう祥」 昨日瑞生さんと約束した時間より少し前に瑞生さんが家まで迎に来てくれた 「瑞生さん遠くなかったですか?疲れてません?」 「全然、車ですぐだったよ」 「本当家までありがとうございます」 「いいえ、ほら乗って」 瑞生さんは優しい笑顔で俺に微笑むと俺の髪をくしゃっと撫でて運転席に戻っていく。 俺もその後を続いて助手席に乗り込んだ 「瑞生さんどこ行くんですか?」 「んーどうしよっか?井の頭公園でも行く?」 「わー!俺、動物園行きたいです」 「うん、じゃあ今日は祥の行きたいところ付き合うよ」 「ありがとうございます!」 そう言って俺達は瑞生さんの車で公園まで向かった 公園につくと平日だからか案外人は多くなくて程よいざわめきの中動物園に入った 平日お昼の動物園はのどかで、どこかの幼稚園が遠足に来ていたり親子連れやカップルだったり男二人で居ると少し目立ってしまう 「な、なんか瑞生さんすみません」 「なんで?」 「…男二人で動物園とか…いい歳して恥ずかしいですよね…」 「ふふっそうかな?俺は祥となら何処でも構わないよ?」 「………瑞生さんて本当に優しいですよね」 「そ〜かな〜」 「そうですよ……あ!瑞生さん見て見て!ゾウ居ます!」 「祥走ると転ぶよ」 「いやそんなまさか!俺こう見えっうわぁ!」 瑞生さんに注意されたにも関わらず俺は小石に躓いてしまった。 次に来るであろう痛みに備えてギュッと目を瞑るが衝撃も来なければ痛みも来ない なんで?と思い目を開けると 瑞生さんの綺麗な顔が目の前にあった 「うっわあ!ご、ごめんなさい」 「……祥って本当見かけによらず危なっかしいよね」 「………すみません」 瑞生さんは間延びした声でそう言うと抱きとめてくれた腕から俺を開放してくれた 「…ちゃんと前見て走るんだよ」 「うう…すみません…」 「…もう切り替えて、怒ってるんじゃなくて心配してるだけだから」 「はい……あの瑞生さん…」 「んー?」 「…………モルモット触りません?」 「モルモット?」 「…………はい」 「ふふっいいよ、触りに行こうか」 おずおずと聞いた俺に瑞生さんは笑顔で微笑むと早速歩き出した 丁度タイミングよくふれあい広場の開園時間で俺は小さくて可愛いモルモットを沢山触っては上機嫌だ 「祥楽しい?」 「はい!楽しいです、瑞生さんは?」 「うん俺もね楽しいよ」 「よかったー、瑞生さん見て見て!あの子可愛いですよ!」 「……俺は祥を見てる方が可愛くて癒されるよ」 「…………瑞生さん…俺、男…」 「あはは、ごめんね?祥って本当愛らしいからさ〜」 「次言ったらジュース奢ってくださいね」 「いいよ、何がいいの?」 「苺ミルクで」 「ぶっ本当可愛いなぁ」 瑞生さんは吹き出して笑うと再びケラケラと笑いながら俺のほっぺをつねってきた それからふれあい広場を出て動物園も周りきると、井の頭公園のボートに乗ったり散歩をしていたらあっという間に夕方になっていた そろそろお腹もすいたし早速家に帰りゆっくりご飯でも食べようとなった俺達は瑞生さんの家に向かう 瑞生さんは一人暮らしをしているらしくて、料理もちゃんとやっているらしく手料理を振舞ってくれると言っただけあってどれもこれもとても美味しかった 瑞生さんが勧めてくれたワインも美味しくて、元々お酒が好きじゃない俺でも飲みやすいやつを選んできてくれたみたいでご飯もお酒も沢山進んだ 「は〜〜〜瑞生さんご馳走様です」 「祥顔真っ赤だよ」 「んーかなり飲みすぎちゃいました」 「気分はどう?」 「ふふっ今は最高です!」 スーパーマンが飛び立つ時のようなポーズをとりそう言う俺に瑞生さんはクスクスと笑い頭を撫でてくれる お酒が入り何だか人肌恋しくなった俺はその暖かい手に身を委ねて目を閉じた そしてこの一週間塞ぎ止めていた蓋が壊れたように直輝へ思っていた気持ちが溢れ出す 「………俺セフレなんかじゃないって何処かで変な自信あったんです」 「うん」 「でも違ったみたいです………そいついつも俺のそばに居てくれたから俺、甘えすぎちゃったんですかね」 「………」 「いつでも余裕綽々で、少し意地悪で、でもいつでも笑って傍に居てくれました…本当に悲しい時あいつの手がいつも俺の目を塞いでくれるんです」 「…うん」 「俺意地っ張りで素直じゃないから…俺の目を塞いで『泣いていいよ、今は誰も見てないから、涙流しても誰にもバレないよ』っていつもそう言って俺の事慰めてくれました」 「……そうなんだ…凄くいい子なんだね」 「ふふっそうなんです…凄くいいやつで、誰からも頼られるけど…でも凄く甘えん坊で裏で凄い努力してます…なんでも出来るでしょって皆からの尊敬の眼差しを裏切らないように裏でいつも一人で頑張る馬鹿なんです」 「………祥は…その子が好きなの…?」 「………14年間幼馴染みで家族みたいに過ごしてきました………だから急にどうこう変わるかって聞かれたら難しいけど…シンプルにあいつに好きかって言われてどう思ったかって答えるなら…………凄く嬉しかった」 「…そっか」 「……でも………友達以上になる覚悟が出来なかったんです。恋人になれば…いつか終わりがくる………でも一歩引いたままの友達でいればずっとあいつと肩ならべていれるかなって」 「………」 「ふふっ…だからバチが当たったんです、うじうじしてるバチが………わー俺何話してるだろ…瑞生さんトイレ借りていいですか?」 「うん、部屋出て右にあるから」 「ありがとうございます、少し酔覚ましてきます」 「いやいやこれからだよ飲むのは〜」 「俺お酒弱いんです、お手やわらかにしてくださいね」 俺はふわふわした足取りで席を立ちトイレへと向かった。 一人浮かれてて気づかなかったんだ、瑞生さんの目に黒い何かが揺れている事に 俺はそんなこと気づきもしないで一人心の中のモヤモヤを消すように楽しいことしか考えないように逃げていた

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