｢へへ、なんか照れくさいね｣ ｢……あー、もう…だっせー｣ ｢どうして……？｣ ｢……、……嬉し泣きとかこの歳でするとか思わなかった｣ ｢〜〜ッ！｣ ｢照れて黙んなよ。 ……まあこれからはその分祥に恥ずかしい事ばっかしてもらうけどね？｣ ｢え？！ 嫌に決まってるだろ！ しないから俺｣ ｢祥の意思は関係ない。 もう祥の全部俺のものなんだから｣ ｢……なんかやっぱり俺、好きになるの間違えたかな｣ ｢ふっ……。 しょーちゃん、好きだよ｣ ｢ちょっやめろ！｣ ｢今更抱き着かれたくらいで何照れてんの？｣ ｢べ、別に照れてない……ッ、外だからだ！｣ ｢それこそもう遅いだろ。……ほら、手だせよ｣ ｢え？｣ ｢いいから、ほら｣ 直輝の言われたとおり手を出すと大きな直輝の掌が俺の手を握り締めた ｢夜だし誰も見てねーよ、帰るぞ｣ ｢えっ？！ あ、うん……｣ そう言って歩き出す直輝の横を肩を並べて歩く あれだけ沢山何度も体を重ねたけど こういう普通の手を握ったりとか綺麗な星見ながら散歩したりとか初めてで胸がぎゅーて締め付けられた 少しの緊張と心地のいい温度を感じて夜の道を歩く 夏の夜風が青臭さを乗せて俺達を包み込むたび全身が優しい何かに包まれているようだった ｢……明日、俺仕事久しぶりにオフなんだよね｣ ｢へ？｣ ｢……だから、良かったら明日俺とちゃんとひたデートしてくれませんか？｣ ｢〜っ！！ な……ッ、何を……ッ！｣ ｢ふふっ、なあに照れてんだよ｣ ｢きゅ、急にそう言う事いうから……卑怯だ……｣ ｢へえ〜、しょーちゃんはこう言う言葉に弱いんだ？｣ ｢うるっさいな！｣ ｢祥、好きだよ｣ ｢ーーっ｣ ｢だーい好き｣ ｢や、やめろっ｣ ｢祥……。 ずっと俺の傍に居ろよ｣ ｢〜〜〜〜っこのバカ！ やめろ！｣ 耳元で甘く囁いてくる直輝に耐えられなくなって繋いだ手をぶんぶんと振り回す。 途端にクスクスとお腹を抱えて笑い出す直輝が余裕過ぎてなんかムカつく ｢痛い、痛い、暴れんなよ｣ ｢なんでお前だけそんな余裕綽々なんだよ｣ ｢……そんなことねーよ？｣ ｢はっ！ どーだか、遊び慣れてるしな……｣ ｢……祥にしかこんなにならねえよ｣ 直輝はそう言うと真剣な顔で俺を見つめ、握っていた手を引いて直輝の胸に当てる 直輝に包まれた手の平に伝わってくる心臓の音が俺よりも早く忙しく鼓動を打っていた ｢祥といるだけでこんなにうるせーし隣にいる祥に聞こえんじゃないかと思う｣ ｢………｣ ｢……思うほど余裕なんかないし、少しでもかっこいい所見せたくて背伸びしてばっかだ｣ ｢……｣ 直輝の視線があまりに強くて真っ直ぐで息をするのを忘れそうになる ｢祥の事、セフレだなんて思った事もない。 玩具だなんてことも……一度だって思ってない、祥は俺の中で、──何よりも大切な人だから｣ ｢……ッ｣ 直輝の目が俺の目から逸らされ静かに閉じられる。胸に当てられていた手が再び直輝に誘われ直輝の綺麗な形のいい唇に触れた。 俺の手の指先に、手の甲に、そして薬指にキスを落として綺麗な瞳が再び開く ｢俺と、付き合ってくれませんか｣ 直輝の真っ直ぐな瞳が揺れている 白く綺麗な髪がふわりと風に運ばれてキラキラと夏夜の闇に輝いている様は煌めく星のようだった ｢……俺、ッこそ……俺でいいならッ……！｣ 見惚れて時が止まったように感じる だけど全身にトクトクと音を立てて心臓が鳴り響くのが聞こえた時、俺だけじゃないもう一つの心臓の少し早い音が聞こえた その暖かい温もりを知っている 鳴り止まない鼓動に震える体は直輝の腕の中に包まれた ｢キャンセルとかなしだから｣ ｢うん｣ ｢やっぱり嫌だとかもなしだから｣ ｢ふふっ、うん｣ ｢もう……もう、離さねーからな｣ ｢おう……かかってこい｣ ｢あははっ、だから喧嘩でもする気なのか？｣ あのひと同じく返事を返す俺に直輝は笑いながら俺を胸から引き離すとオデコをくっつけてはにかむ ｢やっと俺の天使が手に入った｣ ｢……だからその天使ってやめろよな｣ ｢やだね、今日から俺だけの天使だ｣ そう言って笑い合うと再びまた手を繋ぎ夏夜のした綺麗な月と星の光に照らしてくれる河川敷を二人で歩いた 今日俺達は14年間の幼馴染みという関係が終わり 新しい｢恋人｣という関係が始まった