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俺は瑞生さんと話を終えると校舎から出て校門の前で直輝を待つ さっき迄瑞生さんと話をしていたからか少しだけなんだか胸が痛い ジリジリと夏の日差しが差す中ぼんやりと光を反射して熱くねつを集めているアスファルトに視線を落とした時さっき迄うんざりするほど降り注いでいた日差しが誰かの影に遮られた 「……熱中症になるぞ」 「直輝」 「………どうした」 「いや、何も」 「あっそ、ほらいくぞ」 「うん」 「……どうせ瑞生とか言う奴の事考えてたんだろ?」 「……」 「…あいつの所行きたい?」 「ちがっ!」 「ならそんな顔してんなよ、祥がしけた顔してたら瑞生ってやつの気持ちが意味なくなるだろ」 「………うん」 「それとも俺に意地悪されたくてそんな顔してんなら話は別だけど?」 「なっ!朝から散々もうしただろ!」 「それとこれとは別だから〜」 ニヤニヤと笑いながら俺にそう言ってくる直輝に慰められてしまった 「……直輝」 「ん〜?」 「ありがとう」 「ふっ、ほらデートいくぞ」 「っ!お、大声で言うなよ!」 俺の腕を引いて歩く直輝の横に慌てて並び一緒に駅に向かう 「直輝制服できたの?」 「あ、これ?」 「うん、直輝達はもう夏休みだろ?」 「祥ってこういうの好きそうだなーて」 「へ?俺が?」 「毎日毎日エッチばっかでデートしたい〜て考えてる乙女な祥の為に制服デート」 直輝はニヤニヤとした顔でそう言い切ると俺に向かってパチンっとウインクをしてくる ウインクなんてどこのキザだよ!って思うのにそれが似合っちゃうからムカついて堪らない 「そ、そんなこと俺頼んでないっ」 「うん、頼まれてないよ?俺が祥に喜んで欲しくて着たんだしな」 「……」 「で?どう、嬉しい?」 「は?別に!」 「ふふっ、その割には顔にやけてるぞ」 「っみ、見んな馬鹿!」 実は内心かなり直輝とこういう普通の事が出来るのが嬉しくて堪らない。 それに直輝と会うのはいつもお互い何かしら用事の後だったから制服姿の直輝は本当にレアだったしぶっちゃけ嬉しかった しかも何だかんだ言ってこれが初めてのデート?とかなんだしやっぱり嬉しいものは嬉しい それからも直輝と口喧嘩しながら駅について隣町に向かった目的の駅ついて降りると変装してる為に黒髪の見慣れない直輝の後についていく 「祥どこ行く?」 「ん〜どこでも」 「どこでもねえ……暑いから外はパスな」 「日に焼けちゃうと困るもんね」 「……いやそれもそうだけど」 「え?ほかに何か理由あったっけ?」 「…祥が汗かくたんびエロいからパス」 「…………………俺帰ってい?」 「ウソウソウソ!ごめんってしょーちゃん」 「…お前って頭で考えるより下半身で考えてんの?」 「俺がこうなるのは祥にだけだよ」 「嬉しくない」 「ごめんって祥、………あ、プラネタリウムでも行く?」 「えっ?!」 さっき迄帰ると駅に再び体を反転させた俺の腕を掴み直輝が思いついたようにそう言った 「どうする?行く?」 「行くっ……あ、でも…直輝プラネタリウムとか興味ないんじゃ…」 「バーカ、今日はデートなんだろ?」 「えっ…う、うん…」 「ならしけるようなこと言うなよ、デートなんだから可愛い恋人の笑った顔見る為なら何処だって連れてく」 「なっ…!か、可愛いとかそう言う事は…っ」 「顔真っ赤にして照れちゃってしょーちゃんったらピュア〜今すぐ犯したい」 「………」 今さっきまで爽やかにかっこいいことを言ってきた直輝にときめいた自分を殴ってやりたいと思った 一瞬でもこんな馬鹿に胸をきゅんっとさせた俺って… 俺がジト目で見ていたからだろうか 直輝が俺の手を掴むとズンズンと歩き出す プラネタリウムのある場所へと向かうのかと思ったけど行く先は人影がなくなって何処かの路地裏だった 「な、直輝…どこ、ここ」 「祥こっち向いて」 直輝にそう言われて顔を上げると壁際まで追い込まれて顔の横に直輝の手が両方付き逃げ場を無くされた 所謂これって流行ってた壁ドン…?! えっ…な、なんでこんないきなり…えっ… そわそわと直輝に驚きどうしたらいいのかと思っていたら俺の顎を直輝右手が掴みクイッと上を向かされた 直輝の真っ直ぐな瞳が俺の視線と混ざる ………目…綺麗……なんか…かっこいい… いつもよりも真剣な顔をした直輝を新鮮な外で見ているからなのかドクドクと胸が鼓動を早く刻み顔が赤くなるのがわかる ……………唇…好き… 直輝の薄く形のいい唇をぼんやりと見つめていた時その唇がにやりといやらしく口角をあげた その瞬間、直輝の顔が近づき見えなくなる少し前に見えた表情はいつも見てきた俺をいじめる時の酷く楽しそうな顔 気づいた時にはもう遅くて俺は直輝の舌に口内を蹂躙されていた くちゅ、くちゅ、とゆっくり掻き回されて直輝の舌を知らず知らずに追いかけ回してしまう 外なのに誰かに見られたらダメなのに離れないとって押し返してるけどだんだん気持ちよくなってきて何も考えられない 駄目だと警告を鳴らす理性と このままいつもみたいにめちゃくちゃにされたい欲求との対決は簡単に理性が負けた 「ふっ……んぅ…あ、…ンッ」 とろとろと心の芯が溶けてくる もっともっと深いところで直輝を感じたくて直輝の背中に腕を回してシャツを掴んだ すると直輝の舌の動きがもっと激しくなる あ、俺このキス大好き…もっとしたい… 頭の中で考えた言葉が通じたかのように直輝が全てを征服するかのように激しくキスをしてきた クチュリ そんな音を立てて離れた時、二人の間に銀糸が引いている 今きっと俺は直輝の事が欲しくて欲しくて堪らなくて発情しきった顔してるに違いない 直輝も熱く欲情を灯した目で俺を見てくる ゾクッとした刺激が背筋をかけ巡った 「…ふっ、そんな欲しそうな顔するなよ祥」 「うる…さい、バカ野郎」 俺の反抗は反抗になっているだろうか… いくら口でそんな態度を取っていたってきっと今の俺じゃ何を言っても無駄だと思う だけど直輝ばっかにリードされててムカつくからいつもどうしても素直になれなかった 「祥が駅で俺の事ずーと熱く物欲しそうな目で見るから」 「……へ?」 「さっきずっと見てきたろ?祥が可愛くて犯したいっていった時」 「……………は?」 直輝の言ってることは意味はわかっている きっとさっき呆れてジト目でみた時のことを言っているのだろう しかしどこをどうとったらあのジト目を熱く物欲しそうな目で見つめられたに変換出来るのか意味がわからない 「……ふざけんな絶倫野郎」 「でもキス気持ちよかったんだろ?」 「〜〜〜ッ」 否定できない事が悔しくてにやっと余裕そうに笑う直輝に思わず胸が高鳴って八つ当たりなんてことわかってるけど思わず殴ってしまった ぷいっと反対向いて痛そうに顔を歪めてる直輝を置いて一人歩き出す …ちょっと強く殴り過ぎたかも…嫌でも普通にデート出来ないあいつが悪いし……でも殴ることはなかったかな… 一人でズカズカ歩いてたけど悶々と後悔が生まれて数歩進んでから再び後ろを振り向いた そして直輝を置いてきた路地裏まで戻ると直輝がパチクリと俺を見てくる 「…………めん」 「え?」 「……殴って…ごめん…」 「…………」 「…でも、今日は普通にデートしたい…」 「…………」 「…………いっ家でなら…その…あの……別にっ…直輝が気が済むまでエッチな事…し、してもいいけどっ!」 「………へ?」 「でっでも今日は久しぶりの直輝と出かけてるし……制服デート…本当はっう、嬉しかったから…」 そこまでどもりながら話していて嫌になる きっと今俺顔真っ赤だ… 直輝みたいに恥ずかしいことも口説く言葉もサラッと口から出てこない俺に嫌になる しどろもどろになりながらキョロキョロと落ち着きなく周りを見渡して直輝の目も見れない でも最後まで目を見れないまま伝えるのが嫌で意を決してやっと直輝の目を見つめあげた 「…………だから…今日は俺と恋人らしいデートして…?」 ドクドクと心臓がけたたましく鳴り響く たったこれだけをいうのに何でこんなにも緊張するんだろうか ほとほと自分の天邪鬼さに嫌気がさす 俺が伝えてから直輝から何も返事がない ………うざ、かったかな… やっぱり素直になんてならなかったら良かったかも…直輝にウザイって思われたかもしれない…そう思うとどんどん視線が下に落ちてくる ……………なんか言えよ… 心の中で不安がピークに達したとき 直輝が動き出し俺を抱きしめた 「?!?!」 「ほんっと…無自覚って怖…」 「えっ?!」 「わかった、普通にデートしよう」 「ほ、本当に?!」 「ああ、本当に……」 「あっありがとう直輝!」 「…………その代わりさっき言った言葉忘れるなよ」 「へ?」 「家に帰ったら散々エッチな事していいって」 「〜〜〜ッ」 「男に二言はないよな?」 「………なっない…」 「ん〜よしよしいい子だね、じゃあデートしに行こうか」 直輝はご満悦そうに俺に向かい笑って頭をポンポンと撫でるとそのまま手を恋人繋ぎして歩きだした …………あ、あれ…俺なんかとんでもないスイッチ入れた……? もうそれに気づいたときはとっくに遅くて俺はこの日一日この万年変態男に散々泣かされる事になった

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