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02
想像はしていたけどやっぱり直輝がお祭りに来た途端に囲まれて大変だった
でも直輝が一人一人ちゃんと向き合ってファンサービス?みたいなことをしたら皆がすんなりと道をあけてくれる
熱烈なファンには真摯に向き合っていて、何だか直輝ここ数ヶ月で全然前よりも対応が大人になったと思った
「…なんか、直輝変わったね」
「変わった?」
「うん…なんだろ、なんか大人に見えたよ今の直輝」
「なんだよそれ」
直輝はクスクスとおもしろそうに笑っていた
でも本当に思ったんだ
昔みたいにサラッとかわすとかじゃなくて
本当に一人一人に対して丁寧で直輝もファンの人を大切にしてるのがわかった
昔は鬱陶しい顔してたのに…
直輝今は本当にモデルの仕事好きになったのかなぁーなんて少し嬉しくなる
「あ、祥あれやろう」
「どれー?」
「射的」
「いいよ、やろう!勝負する?」
「また負けるのに?」
「今度は勝つし!」
ニヤニヤと小馬鹿にする直輝を置いて射的のおっちゃんに駆け寄った
二人分頼んで直輝に一つ渡す
「負けたら祥どうすんの?」
「負けないから知らない!」
「んー勝負するなら罰ゲームつけよう」
「いいよ!」
「じゃあ俺が勝ったらセーラー服着てね」
「は?!」
突然意味のわからないことを言い出した直輝にギョッとして振り向いた時直輝が真剣な目をしてパンパンと的めがけて射撃する
それと同時にボトボトと弾が当たった景品が後ろに落ちた
「なっ!?」
「ふっ」
「〜〜っ!俺だって取れる!」
「楽しみにしてる」
そう言われて俺も景品を狙い引き金を引き掛けた時、直輝が耳元で喋り出したおかげで力が抜けてしまった
「っ!!」
「あーあー祥ちゃんと狙わなきゃダメだろ?」
「直輝お前今のわざとだろ!」
「んー?違うよ、まず祥の構え方がおかしいから俺が教えてあげる」
「え?ちょ、ちょっと」
背中から直輝に抱き込まれて両手の上に直輝の掌が添えられる
「こうすんの」
「っ……う、ん…」
「で、手はこうだろ?」
「…っ…直輝…耳っ」
「祥ちゃんと前見て集中して」
「し、てる…っ」
「はいはい怒らないの、ほら前見て」
「…………」
「引き金引いてみて?」
直輝に支えられたまま引き金を引く
すると狙った景品に見事に弾が当たって後ろに落ちていった
「わっ!凄い!」
「ふふっじゃあ後は一人でやってみ?」
「うん!」
直輝が俺から離れて一人でさっき教えてもらったように狙ったが結果俺の力じゃ最後の一弾しか当たらなかった
「ぶはっ祥って本当ゲーム下手だよな」
「うるさい」
「テレビゲームも下手だし本当…あははっ!」
隣でさっきの射的での俺の下手さにケラケラとずっと直輝が笑っている
「笑うな!」
「だってあんな下手でよく勝負しようなんて」
「罰ゲームなんかあるとは思わなかったからだよ」
「でも勝負は勝負だからな〜セーラー服着ろよ」
「セーラー服なんてどこにあんだよ」
「そんなのどこでも手にいれられる」
「…………」
「楽しみだな〜祥のセーラー服」
今度はいやらしく笑いながら直輝が俺の肩を組んでくる
結局いつもこうやって直輝のいいようにのせられてる事に気づいた
「直輝ばっかずるい」
「え?」
「俺も直輝に何かさせたい」
「ふふっ祥のお願いなら何でもするよ?」
「女装も…?」
「みたいの?」
直輝にそう聞かれて考えたけど
190の女装でどうなんだろ…
「祥がみたいなら俺もセーラー服着るけど」
「いやいい……」
「なーんだつまんないの」
やたらとノリノリで聞かれるから何だか興味がなくなる
何か直輝が嫌がるものないかな何て悶々と考えていると美味しい匂いがしてきた
「たこ焼き美味しそう」
「食べる?」
「うん!直輝はどうする?」
「俺は祥から一つ貰えばいいや」
「わかった!」
さっきまでの悶々とした気持ちはどこかへ飛んでいって直輝と仲良くたこ焼きを買いに並ぶ
熱々の出来たてのたこ焼きを手に持ってどこか座れそうなところを探してる途中直輝がラムネを買って少し歩くと誰もいない辺り一面芝生へと出た
ふわふわな芝生に日が沈み出して真っ赤なオレンジ色が広がる空を見ながら直輝と座り込む
お祭り特有の匂いと騒がしい楽しい音が聞こえて太鼓の音が体に響く
「いただきます」
「祥ラムネ飲む?」
「んー後で飲む!」
「じゃあもっとくから祥はたこ焼き火傷しないように食べな」
直輝が穏やかな顔して俺の方をずっと見てるから何だか落ち着かない
猫舌なのを知ってて気にしてくれてるのが嬉しくて何だか嬉しいし優しい顔して言うからドキドキした
「祥食べないのか?」
「食べるよ、冷ましてるの!」
ぽーと赤くなる顔を隠すようにしてまだ熱そうなたこ焼きをパクっと食べたら思ったより熱くてびっくりする
涙目になる俺を見て直輝が何してんだよと言いながらラムネをくれた
「気をつけろって言っただろ?」
「…らって……」
ヒリヒリする舌をべーっと出しながら火傷したところを冷やす
「祥舌が真っ赤」
「痛い…」
「猫舌って大変だな」
どこか他人事みたいにヘラッと直輝が言ってきた
元はと言えば直輝が見つめて来るからだろって思って横を見たとき直輝の顔が近づいて唇が重なる
冷たくて甘いしゅわしゅわとしたものが口の中に流れ込んできた
口の中をパチパチと刺激するラムネを飲み込むと直輝の舌が入り込んでくる
まだヒリヒリして痛いのに直輝にキスされて痛くて甘くて気持ちくてぐるぐる混ざって頭がふわふわとした
「ふぅ…っ……んっ」
「舌熱いな……、まだ痛い?」
「っ…、…も、大丈夫…」
「ん、そっか」
こくんと頷いて答えると直輝が安心したように笑って頭を撫でてくれる
「まだ花火までたっぷり時間あるしゆっくり食べろよ」
「……うん」
頷き今度はちゃんと冷ましてから口の中にいれる
さっきよりも全然冷めててやっと食べれるくらいになった
「美味しい?」
「うん!」
「ふふっ良かったな」
「直輝は食べないの?」
「俺は甘いのが食べたい」
「直輝って本当甘党だよね」
「祥は食べきれない癖に食いしん坊だよな」
「うっ…」
横目でそう言われて何も言い返せなくなった
昔から少食なせいで俺の食べきれなくなったものは直輝がいつも食べてくれてた事を思い出す
お祭りとかどこか出かけるとついはしゃいで食べきれないのに買いすぎては直輝に怒られていた
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