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「今日は残さないし全部食べる」 「ふっそれいつも言ってる」 「今日は絶対!」 「わかったわかった」 ムッとする俺に直輝がどうどうとなだめる すっかり沈んでしまい星がキラキラと輝き出した空を見ながらたこ焼きを食べた 「祥マヨネーズついてるよ」 「へ?」 「ほんと…なんか食べるの遅いよな…口ちっさいし小動物みたい」 クスクスと笑いながら直輝が俺の口の横をぺろっと舐めとる 「〜〜〜っ!!」 「顔赤いよしょーちゃんっ」 「だっ…!……もう本当直輝意地悪だよ…」 「祥が可愛いから」 「可愛いとか嬉しくないってば」 「じゃあ好きは?」 「〜〜〜〜っ」 耳横で低くハスキーな声で囁かれて不意打ちに顔を俯かせてしまう ドクドクと胸が煩くなって顔が熱くなる 「しょーちゃん、俺も食べたい」 「た、食べていいよ」 「なんでした向いてんの?」 「別に」 直輝にそう言われてふいっと横に顔をそむける 「そっち向いてたら俺食べれないんだけど」 「勝手にとって食べていいから」 「やだよ、アーンして食べたい」 そう言うなり早く早くと直輝が騒ぎ出す 無視しても静かにならない直輝に折れて振り返りたどたどしくたこ焼きに爪楊枝を刺した 「…ん」 「もっと可愛く言ってよ」 ずいっと差し出したたこ焼きをじっと見たあとニコニコと笑顔で注文してきた 「…んん!」 「ふふっほんと照れ屋だよね」 俺の手首を掴んで目を見つめたままた直輝がたこ焼きを口の中にいれる 俺よりも大きな口で簡単に食べ終わると直輝がちゅっと俺の指先にキスをしてきた 「た、食べただろ?離せ…っ」 「んー」 「っ…直輝…」 俺の手首をしっかりと掴んだまま何度も何度もキスをしてくる 手首にも、手の甲にも 至る所に俺を見つめながらキスをしてくる直輝から目が離せなくて遠くで鳴り響く太鼓の音と俺のうるさく響く心臓の音が重なった 「なお…き……」 「祥…好きだよ」 「んっ」 ぐいっと引っ張られた力に委ねた体が直輝の腕に抱きしめられて唇に直輝の唇が重なった さっきよりも暗くなった外なら 大丈夫かな… 誰にも見られてないかな… どこかでそんな不安を感じながら、でも直輝とのキスを受け入れた 「ふぅっ…ん……っんぅ…はぁっ…直輝…」 「祥顔赤いよ」 「……」 「続きは家帰った時にな」 「う、うるさいっ」 頭を引き寄せられて耳元で愉しそうに直輝が囁く もっとして欲しいってバレちゃってた事が恥ずかしい 外なのに駄目なのに離れた直輝にもっと触って欲しくて、もっといつもみたいに激しくキスされたくて 体が熱を持った事を見抜かれて酷く恥ずかしくて堪らなかった 「俺も腹へったし祭り戻ろう」 「あ…うん」 「祥他に何食べる?」 「りんご飴!」 「それは昼も聞いたよ」 芝生から腰をあげて直輝と並びながら売店を見て回った いろんな出店を回って食べたり遊んだりして 神輿が通るのを二人で見て騒ぐ 久しぶりに二人でお祭りに来たけど 物凄く楽しかった そろそろ花火大会の時間になるから移動してた途中に、約束した通り直輝がりんご飴を買ってくれる 真っ赤な大きなりんご飴を手にして直輝の知っている穴場へと移動した 長い階段を登りたどり着いた神社の社の中に入るとチラホラと何組かのカップルがいた あんまり知られていないのか広いのに人が少ない 「こっからだと良く見えるんだ」 「俺毎年来てたのに知らなかった」 「あんまり知られてないからな」 直輝の話を聞きながら境内の端っこ側に移動して石でできた縁石に座り込む こっちまでは誰も来ていなくてすぐ後ろには社殿があった 「神様に怒られない?」 「あははっ今日だけ神様も花火みて許してくれんだろ」 直輝はクスクスとわらって俺の頭をぽんと触ると時計を見た 「そろそろだな」 直輝が前を向いて、つられて俺も前を向いたと同時に暗い空の上に大きな鮮やかな花火がうち上がった 赤とピンクのでかでかとした綺麗な花火が大きな音と共に夜空に花を咲かせる 消えていく時にパチパチと白く光なくなるのを見てさっきのしゅわしゅわとしていたラムネを思い出した その大きな花火のあとに続いて色とりどりの花火がどんどん打ち上がる 白 黄色 緑 赤 ピンク 真っ暗な夜空に沢山の色が散っては消えていく 消える前にまた新しく輝いてを繰り返して 静かな夜に大きな轟音を響かせて花火が打ち上がった

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