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閑話・キスの日

「しょーちゃん」 「なに?」 「ちょっとこっち来てよ」 「どうしたの?」 洗い途中だった食器を流し台に置いて直輝の元に行く 言われたとおりソファの隣に座ると直輝がニヤニヤと顔を近づけてきた 「なあ今日何の日か知ってる?」 「え?んー5月23日?」 「それは日にちだろ?」 「なんの日って…誕生日も違うし……なんかあった?」 「ふっ今日はキスの日らしいよ、しょーちゃんっ」 「………………」 にっこり笑う直輝とオネダリして来るときに使う「しょーちゃん」呼びに背中がゾクッとする 「だ、だから…?」 「でもキスの日も後一時間もしないで終わるだろ?」 言われて時計を見れば確かに23時をすぎている 「…それが……どうしたんだよ……」 「ふふっ、んーだからさ、キスの日が終わるまでチューしよ?」 「………………」 「ね?」 「無理」 「なんで?キス好きだろ?」 「好きじゃないしそれとこれとは別!」 「ふーん」 俺は直輝の肩をぐいっと押し返すとソファから立ち上がり台所に戻る エプロンをつけて再びお皿を洗うと直輝がこちらにやってきた 「無理だからな、しないからな」 「ん〜別にいいよ〜」 「………」 珍しく簡単に身を引いたなと思ったとき驚き声が出そうになった 後ろから抱きついてきた直輝がシャツの中に手をすり込ませて体中を撫で回す 「っ…こら…っ!……なんも、しない…って…」 「別に変なことはしてないだろ?疲れてるかなってマッサージしてるだけ」 「んっ…ぁあっ!…バカっ…そ、んなとこしなくていいっ」 「えー乳首もこってるよ?…ほら、硬いよ?」 「んんっ…はぅっ……だ、から…!」 「ねえ、祥…俺キスしたい」 「んっ……はぁっ…」 耳元で直輝が低く囁く 喋る度に耳たぶが唇に触れてゾクゾクする 「だ…め……っ…だよ…」 「なんで?」 「あした…早いしっ……」 「だからキスだけ、日付超えたらしないから」 「………」 「祥、こっち向いて?」 「…………っ」 俯く俺の首筋に直輝がチュッと吸いつく こんなのずるいだろバカ…… 「……っ…30分だけだからな」 「うん、充分だよ」 振り向き直輝にそういうなりぐっと押し付けられてキスをされる 「ふっ……ん…」 ちゅっ ちゅっ そうやって何度も何度もついばむようなキスをされて唇からゾワゾワと熱が広がる どんどん口の中が寂しくなってきて閉じていた唇をかすかに開いた だけど直輝は舌先で俺の唇をかたどるように舐めとっては甘噛みをしてくる さわさわと頭を撫でられながら耳の横を触られて体が落ち着かない 「はぁっ…んっ…なおき…っ」 「ふっ、ダメだよ」 「なっ……んー……ぁう」 早く欲しくてたまらないのに優しく優しく何度も角度を変えては触れるだけのキスをされてもどかしい 今きっと直輝の舌でめちゃくちゃにされたら気持ちいいだろうなって思ったら下腹部がゾクゾクした 堪らなくなって直輝の背中に抱きついてシャツにしがみつく 「ふぅ…っ…んぅっ…!ん〜〜〜……っ…」 直輝が熱く吐息を漏らした後 待ち望んでいたキスをやっとしてもらえた 舌を優しく絡め取られて舌の裏を舐め取られる 直輝のキスに応えようとするのに気持ちよくて息が苦しくなって頭がぼんやりとしてきた 酸欠になりそうなのにでもまだ離れて欲しくなくてもっともっと直輝に振り回されたい 俺っていつからこんなに女の子みたいな考えになったのかなぁ…なんて頭の隅で思った 耳を抑え込むようにして直輝に固定されたまま口の中を掻き回される 俺が好きな激しいキスに涙が溢れてきた 苦しい 気持ちい 好き 大好き いろんな思いが溢れ返ってきて心臓が締め付けられて痛い 甘い快楽が全身をかけ巡ってきて足腰が立たなくなってきた頃にはもう直輝にしがみついて腰が抜けてしまった 直輝に抱きかかえられたままベットまで運ばれて何度も何度も角度を変えては深くキスをし合う だんだんと唇の感覚がなくなってきて吸われる度に痺れてたまらない ゾクゾクとしたものが全身をかけ巡ってきて体が小刻みに震えてきたとき、まさかキスだけで白濁液を吐き出してしまった 「はぁっ…ぁんっ……はぁっ…ん…は…っ…」 「ふふっ、しょーちゃん気持ちよかった?」 「きもち…かった……ぁ」 「よかった…丁度日付超えたね」 直輝は腕時計を確認して微笑む もうそんなに時間たったのかと驚いた まだ全然5分も経ってないと思ったのに でも本当に時計の針は0を超えていて30分以上もキスをしてた事を教えてくれた 「じゃあ祥お風呂いっておいで」 「えっ」 「なに?寝るんだろ?」 「…………」 あんまりにもけろっとしている直輝に驚く もう終わり?なんて思ってしまった俺に酷く恥ずかしく思った 「…祥行かないの?」 「………あ……うっ………」 「どうした?」 「………なお…は…もう、いいの…?」 「何が?」 「〜〜〜〜っ」 直輝はきっと気づいてる でもわざと俺に言わせるために知らないふりしてるんだ 「…だ、だから……もう…キス…しないの?」 「ふっ日付超えたら終わりってさっき言わなかった?」 「で、でも…」 「しょーちゃん、して欲しいことあるなら口で言ってくれなきゃわからないよ?」 優しくにっこり微笑む直輝が悪魔に見える 気づいてる癖に本当に意地悪だ 「…………て」 「なに?」 「もっと…キス、して」 「それだけ?」 「………っ」 「祥?」 「〜〜〜〜っ!もう意地悪すんな!」 「あははっごめんごめん」 恥ずかしくて堪らなくて枕を直輝に投げつける 「じゃあ祥がして欲しいことするけど文句言うなよ?」 「言わな…いよ……」 「後で怒るのもなしな」 「…うん……」 頷くと目に溜まった涙を直輝が拭ってくれる そしてそのまま抱きしめられてその日も結局流されたまま寝る時間もないくらい抱き合った 「…もう1時間も寝れない」 「祥が悪い」 確かに今日は俺が悪い…… 「ふふっでも可愛かったから俺は凄い嬉しかったよ」 「もう、うるさい!喋んな!」 「はいはい、おいでこっち」 ベットの中で直輝に引っ張られて背中いっぱいに直輝の体温が伝わってくる 前に回された腕に抱きつくと髪を撫でられてすぐに睡魔が襲ってきた 「祥お休み」 「……ん…お休み、直輝…」 直輝の腕に包まれる なんだかもう毎日毎日直輝のペースに乗せられてるけど今みたいなこういう時間が好きだから怒る気もなくなってしまうんだ なかなか俺も直輝の毒牙にやられてるなーなんて思いながら大好きな体温に包まれて眠りについたのだった

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